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♂♀の哲学



フランス書院だか何だか知らないが、世の中の官能小説なんてものは、クリシェをなぞっているばかりだ。
どれもこれも童貞の妄想という感じがして、ヌルい。ダンテやニーチェに迫るような作品はないのか!?

・・・なんて憤慨している皆様に朗報です。あるんですよ。実は。
ダンテやニーチェに肉迫するような、危ない官能小説が。とてつもなく哲学的な、性の書が。
著者は花村萬月さん。キリスト冒涜の書『ゲルマニウムの夜』で芥川賞を受賞したアウトロー作家です。
当時も随分騒がれました。「文芸ビッグ・バンだ」とか何とか言って。水嶋ヒロくんどころの衝撃じゃないですよ。
もともとエロを得意とする花村さんが、正真正銘、真正面から官能小説に挑んだのが、こちらの『♂♀』です。
読んで字の如し、まさに♂と♀の性に纏わる物語です。著者は自身の触角を用いて性の根源を詳らかにします。

陰茎は確かに欲望で硬直する反面、触角として相手の胎内を探る精神的器官として作用する側面が
強く、私は性の現場で醒めきった眼にすぎない
~という主人公の考察に端を発し、物語は性と聖を駆け巡る。

やがて美和は鎮まった。窮めつくして、虚脱した。眼から涙が伝い落ちている。
銀色の涙の痕は、蛞蝓の這い伝った痕跡にちかい。♀は蛞蝓である。涙を流す蛞蝓である。
そして♀が蛞蝓を全うするときに流すそれは感応の涙であり、官能の涙である。
私はそれを美和に伝えることができたことに心底からの満足を覚えていた。
つまり私という♂は眼なのである。眼にすぎないのである。


やがて、不埒な思索は、ある種の高みに到達します。

弱者に対する微笑みは、人類最大にして最悪の原罪である。それは断言することができる。
しかし、いまでは、なにも感じない。原罪とは、もともと持っている罪であるからこそ原罪であり、
宿罪であるので、原罪を咎めるほうが、愚かであることに気づいたのである。


どうですか、皆様。官能小説だからと言って、もうコソコソと隠れてページを捲る必要はありませんよ。
堂々と『ツァラトゥストラ』や『神曲』の間に並べてやりましょう。本当に凄い作品なので・・・。

花村萬月 / ♂♀

テーマ : 小説
ジャンル : 小説・文学

切りとれ、あの祈る手を



書架に並んだ鮮烈の赤を、あなた方は見逃してはおられまいか?

生涯を賭けて聖書と向き合い、ドイツ語の基礎を築いたマルティン・ルター。
天使ジブリールの言葉を、読み読んで読み続け、そして書いた文盲の孤児ムハンマド。
現代のデータベースの根幹を成す中世解釈者革命。

それらはすべて言葉の真髄を貫いている。言葉と文学にまつわる革命。そこから現在に至る永遠。
ルターやムハンマドやニーチェやドストエフスキーの成し遂げた夜戦と永遠。孤独と孤独の狭間で。
彼らが真摯に言葉を紡ぎ、それらを読む者の脳裏に爪あとを残し、世紀を超えて、また言葉と成る。
彼らの革命の、突端に、極東に、本書の著者は佇み、語る。その言葉は、ふたたび歯車を回転させる。
言葉は、文学は、もう一度、世界を揺るがすに違いない。本書は書店に仕掛けられた時限爆弾である。
著者は言う。取りて読め、読んで読み、読み、また読んで、筆を執れ。そして、情報と暴力に別れを告げよう。
いま、血は流れた。流れた。流れた。血は。鮮烈の赤は。

佐々木 中 / 切りとれ、あの祈る手を

テーマ : 小説
ジャンル : 小説・文学

エクスペリメンタル・ラヴ・シック



愛人との底なしの逢引を重ねるごとに、妻への敬虔な思いを募らせる愚直な男。
蠅、狼、猫といった神の化身(と思い込んでいる)に脅えるあまりに、妻への配慮を欠く国王。
己の不在時に身ごもった、愛する女への純真を最後まで貫き通す、悲しきチェリー・ボーイ。

三者三様、それぞれの主人公の身に起きた出来事を淡々と描く、名作中の名作ですね。
それにしても、けったいな物語ですな。「なんでそ~なるの?」と突っ込みを入れたくなること必至です。
しかし「なんでそ~なるの?」と思いつつも、そう書かれたからには、そう受け取るしかないですからねぇ。
現代思想家の佐々木中さんが仰るように、そもそも他人の書いた物語なんて、読める筈がないのでしょう。
自分が理解できる範囲の解釈で折り合いをつけて、分かったような気になって、批評するのが関の山。
本書に関しては、ムージルが何を考えているのか、僕にはさっぱり分かりません。
同時に、分からないってことは、なんて贅沢なことなんだろうとも思ってしまいます。
こういう物語と何度も向き合うことで、僕たちは日常に潜む「何か」の片鱗を見つけるのかもしれませんね。
それは、ときに手痛いしっぺ返しを喰らうことにもなりかねないのですが・・・。

自分を映すことのできる他人が身近にいなければ、
自分自身のことなぞ、実にわずかしか分からないものなのだ。
 (本文より抜粋)

ムージル / 三人の女・黒つぐみ

テーマ : 小説
ジャンル : 小説・文学

Books of the Decade

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と、言う訳で今回で200回目の更新となります。ここまで続けてこれたのは皆様のお陰です。感謝。
で、予告どおりに今回もやります。ゼロ年代ベスト。100回記念のときは音楽でしたので、今回は文学。
世界に誇れる、最強の日本文学です。引き続き、お手柔らかに、どうぞ。

1.阿部 和重 / シンセミア
  本書の登場によって、文学界のモードが完全に変わった。忌まわしき神町サーガの幕開け。

2.保阪 和志 / カンバセイション・ピース
  ページとページの狭間に織り成す、いくつのも時間。読書が特別な体験であることを教えてくれる。

3.町田 康 / 告白
  誰もが共感を寄せるだろうが、誰にも描けない物語。溢れ出す思弁の洪水に、号泣必死。

4.古川 日出男 / 聖家族
  圧倒的なグルーヴ感で語られる、妄想の東北史。カテゴライズ不能、霊長類ヒト科最強のメガ・ノベル。

5.吉村 萬壱 / バースト・ゾーン
  怒涛のように押し寄せるグロテスク描写。人類が恐れるディストピアを、言葉の力で現出させる。

6.舞城 王太郎 / 阿修羅ガール
  ガールズ・トークが純文学を喰らう。この時期の舞城さんは本当に神がかり的な面白さだった。

7.磯崎 憲一郎 / 肝心の子供
  たったの100頁ほどで、ブッダの歴史を俯瞰する。つまりは、極めてスリリングな圧縮の文学。

8.堀江 敏幸 / 河岸忘日抄
  本を読み、音を聴き、酒を飲むことの豊かさを、静謐な文体で綴る贅沢な一冊。

9.いしい しんじ / ポーの話
  近年のジブリが描こうとして描けていないファンタジーが、ここにはすべて詰まっている。お子様に是非。

10.西村 賢太 / どうで死ぬ身の一踊り
  退屈な私小説の世界に、楔を打ち込む「どうしようもなさ」。自分はダメ人間だと思った時には、必読。 

以上、繁盛亭アルバイテン的「Books of the Decade」でした。
飼い慣らされるだけの教養なんて、クソ喰らえです。大切なのは強度です。言葉の濁流に溺れましょう。

テーマ : 小説
ジャンル : 小説・文学

幻聴なるアフリカ



帯に寄せられたピーター・バラカンさんの言葉に象徴されるように、荻原さんの『ポップ・アフリカ700』は、
熱心なアフリカ音楽ファンにとって、まさに唯一無二の教科書と言っても過言ではないのでしょう。
もちろん異論はありません。実際に僕もそのような目的で、活用させてもらっています。
しかし、本書の魅力はそれだけではありません。ディスク・ガイドというのは表向きの顔でしかないのです。

無礼と誤解を承知で言わせて貰えば、本書はアフリカ音楽という呪術に、いや、アフリカン・ポップスという名の
ザールに憑依された、ひとりの東洋人の冒険譚なのです(bunboniさん、勝手な解釈をお許しください)。
そう、これはまさにミシェル・レリス『幻のアフリカ』の現代版というか、ポップ・バージョンに違いありません。
700枚のディスクに充てられた詳細なレヴューと、レリスの日記は、イコールで結べてしまうのです。

氏は、たったひとりで、700枚の音源を相手に格闘しておられるのですよ。
「好き」という想いだけで、誰もが成せる業ではありません。

愛憎相半ばする紹介文は、当然のようにスリリングで、手に汗握らずにはおれません。
良くも悪くも、冷静に「じゃあ今度はこれを買おう」とはなりません(bunboniさん、本当にすみません)。
えーい、もう思い切って言ってしまいましょう。本書はアフリカを舞台にしたビルドゥングスロマンなのです!
だからこそ、『幻のアフリカ』と同様に、何度でも読み返したくなる訳です。
そして、荻原さんの音楽を巡る冒険は、引き続きコチラでも展開中なので、これまた目が離せません。

本書のキーワードである「700」には到底及びませんが、次は更新「200」回記念として例の企画やります。

荻原 和也 / ポップ・アフリカ700

テーマ : 小説
ジャンル : 小説・文学

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繁盛亭アルバイテン

Author:繁盛亭アルバイテン
ヒッピー・ボヘミアンな生活に憧憬を抱く浪速のポンコツ。
物心ついたときから寝つきが悪い。

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