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散々・悲惨・ジーザス・サン



周囲から「ド阿呆(ファックヘッド)」と呼ばれている男を軸にした連作短編集。
自分が言うのも何ですが、これは相当に酷いお話です。
ここまで酷いと、逆に賛辞を送りたくなるってものですよ。

ファックヘッドを筆頭に、登場する全ての人物が自堕落で、腑抜けで、おまけにジャンキー。
馴れ初め、馴れ合い、成り行きまかせの狼藉三昧。読書中に何度も「ダメだ、こりゃ」と呟いてしまいました。
要するに、どうしようもない人間の、どうしようもない日常を、ただ「忠実」に描いているんですね。
そう、愚直なまでに忠実に。ありがちなヒロイズムもなければ、社会に対するアンチテーゼもありません。
そういう意味では、読者に対して遠慮の欠片もない表現の連続ですが、そこがすごく新鮮で、面白い!
誰もがチャールズ・ブコウスキーやレイモンド・カーヴァーの描く登場人物のようには、生きられませんから。

強者に媚びへつらい、弱者からは奪い、酒やドラッグに溺れ、保身の為ならば友人さえも見殺しにする。
上昇志向は微塵も無く、かと言ってアウトローを気取るほどの貫禄も余裕もありません。
嘆かわしいことに、人間や実社会よりも、神や精神世界に依拠している様子です。
だからこその、ジーザス・サン。ダメだ、こりゃ(笑)。

取り分け、堕胎手術を終えた恋人に「気分はどうだい? 何つっ込まれた? なあに?」と執拗に追求する
「ダーティ・ウェディング」は低俗の極みというか、愚の骨頂でしょう。まさにファックヘッド。
ヒッチハイクした車が大惨事を引き起こす「ヒッチハイク中の事故」から、とある主婦の入浴を覗き見する
「ベヴァリー・ホーム」までの11篇、ありとあらゆる品性下劣な行いを堪能することができます。

このように、ただあるがままの現実を、あるがままに描いていく訳ですが、時折ハッと息を呑むほどに美しい
描写に遭遇します。それは読者にとっては非現実的であっても、著者デニス・ジョンソンや主人公ファックヘッド
には紛れもない現実なんですよね。その描写力、説得力は大天才ボルヘスに勝るとも劣りません。
本当の意味でひらかれた表現というものが、ここにはあります。

まぁ、どうしようもない話ばかりなんですが、ある種の再生の物語として楽しむことも可能ですし、
ジャンキーたちの振る舞いからも、何がしかの収穫を得られる稀有な一冊であることは間違いありません。

デニス・ジョンソン / ジーザス・サン
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テーマ : 小説
ジャンル : 小説・文学

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繁盛亭アルバイテン

Author:繁盛亭アルバイテン
ヒッピー・ボヘミアンな生活に憧憬を抱く浪速のポンコツ。
物心ついたときから寝つきが悪い。

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