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行間に降り積もる雪



「今日のデートどこに行く?」「どこでも良いよ」「じゃあ、一緒に考えよう」
と友好的に、ことが運ぶ場合もあれば、
「今日の晩御飯、なに食べたい?」「なんでも良いよ」「じゃあ、てめぇの脳みそでも食らってな」
と命の危機に瀕することもある。世界万人に共通のルールなんて、本当は存在しないんですよね。
優柔不断というだけで、命の危機を感じなければならないことも、あるっちゃー、あるそうです。
そのあたりを踏まえて、オルハン・パムクの『雪』です。

トルコ東部、アルメニアとの国境に近い町カルスを訪れた詩人のKa。
そこで彼は刹那的な恋愛と、イスラム原理主義者による血腥いクーデターに巻き込まれていく。
無神論者という曖昧な態度が、Kaを窮地に追い込んでいくのです。嗚呼、恐ろしや。

物語・物語内物語・物語外が重層的に絡み合う本書は、他者の言葉に耳を傾けることの重要性を問うている。
確かに、すべての諍いの発端は、コミュニケーション不全から齎されるのかもしれません。
政治的、思想的な問題提起は物語の重要なエレメントであるに違いありませんが、自分が何よりも圧倒
されたのは、タイトルにもなっている雪の描写です。未踏の地であるトルコの凍てつく寒さが否応なしに
伝わってきます。本を手にした指先が、かじかんでくると言っても過言ではありません。
猛烈な吹雪の向こうに思想や政治の全体像が翳んでゆく。イスラム原理主義の本質も、雪に埋もれてゆく。
すべてを覆い尽くす雪。雪。雪。その描写がやはり圧倒的に素晴らしいです。
払拭しがたい雪の存在が、ある意味、著者の白旗宣言。思想が生む軋轢の前では、ペンすら無力であるとの。

物語の終盤近くで、著者であるオルハン自身が登場し、以下のような言葉を残しています。
「あんたが話したことを、読者に信じてもらいたくない。遠くからでは、誰も、俺たちのことをわかりはしないのだ」
それでも、耳を傾けることは決して無駄ではありません。いや、耳を傾けることくらい「しか」できないのです。
トルコ音楽にある種の郷愁を覚えてしまう自分にとっては、避けては通れない物語でありました。

オルハン・パムク / 雪
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テーマ : 小説
ジャンル : 小説・文学

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繁盛亭アルバイテン

Author:繁盛亭アルバイテン
ヒッピー・ボヘミアンな生活に憧憬を抱く浪速のポンコツ。
物心ついたときから寝つきが悪い。

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