スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

レコード錬金術の行方

dilla2.jpg

ジェイムズ少年は、時間を忘れて黒い円盤に見惚れていた。
回転するレコード。溝に刻まれているのは、往年のソウル・ミュージック。
針が盤を撫でる際に生ずるノイズまでもが、ジェイムズ少年には心地良い。
彼は両親のレコード棚からとっかえひっかえ円盤を持ち出しては、プレーヤーに乗せる。

ある日の朝食時、ジェイムズ少年は食パンを頬張りながら、両親に告げる。
「いつか、パパやママのレコードに魔法をかけてあげるね」
両親は顔を見合わせて、穏やかな笑みを浮かべた。

やがて、ジェイムズ少年は数え切れないほどのレコードを小脇に抱えて、部屋に閉じこもる。
もちろん、レコードに魔法をかけるためだ。盤面に堆積した埃を払い、少年は音楽と向き合った。
来る日も来る日もジェイムズ少年は部屋にこもっては、レコードに魔法をかけ続けた。

それから幾日かの時を経て、扉はゆっくりと開かれた。
少年から青年へと成長したジェイムズの手には、一枚のレコードが握られていた。
「パパ、ママ、できたよ」

頭髪に白いものが混じり始めた両親は、いつかと同じように顔を見合わせて、穏やかに微笑んだ。
レコードに針を置くジェイムズ。その表情はどこか得意気である。そして、音が鳴る。
完璧なまでにシンプルに響くリズムトラックには、確かに両親のレコードの面影があった。
しかし、同時にそれはまったく新しい音楽でもある。極めてソウルフルなブラック・ヒップホップだ。
彼は両親のお気に入りだった「Think Twice」や「Brazilliann Groove」などに魔法をかけたのである。

しかし希代の錬金術は、彼の身体に異変を齎し、そして蝕んだ。
2006年2月、ジェイムズ・ヤンシーは膠原病による合併症のため、32歳の若さで帰らぬ人となる。
それでも彼は最後までレコードに魔法をかけ続けた。その成果が、入院中の病室で産み落とされたという
『DONUTS』である。未だに世界は彼の残した大胆なループに耳を傾けている。
言うまでもなく、自分もそのひとりだ。

JAY DEE / Welcome 2 Detroit
JAY DEE / DONUTS
スポンサーサイト

テーマ : 音楽
ジャンル : 音楽

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

繁盛亭アルバイテン

Author:繁盛亭アルバイテン
ヒッピー・ボヘミアンな生活に憧憬を抱く浪速のポンコツ。
物心ついたときから寝つきが悪い。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。