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終わりなき神町サーガ~Pistils~



著者の出身地である山形県神町を舞台にした忌まわしき年代記の第二章。
前作『シンセミア』は00年代を通じて、最も重要な一冊であることに疑いの余地はない。

阿部和重には、町田康や古川日出男のように独自の文体や言葉がない。
けれど彼は、物語を創出し、それを自在に操作する手腕にずば抜けた才能を有している。
神町の歴史を自身のフィルターを通して語り直そうとする様は、まるで西アフリカのグリオの如し。
小説に於ける三人称とは神の視点を獲得する行為であるが、不遜にも彼は、神を引きずり落とそうとする。

夥しい血と硝煙と陰謀の渦巻くカオスによって、現代の地獄絵図を提示した前作から一転、
本作は拍子抜けするほどに柔らかい描写でメルヘンチックに幕を開ける。だが、油断は禁物である。
著者は阿部和重なのだ。神をも冒涜する危ない男である。
読み進めていくうちに、最初に感じた夢見心地な質感こそが、実は巧妙に仕掛けられた罠だと気付く。
しかし、もう遅い。すでに手遅れなのだ。この禍々しい物語からは、もはや逃れる術はない。

神町で人知れず暮らす魔術師一家を軸に、歴史や政治や感情が幾重にも折り重なって鼻腔を馨香で満たす。
ドラッグやニューエイジ思想やロリコンやいじめやインターネット・ウイルスやCIAの陰謀といった要素を、
これでもかと言わんばかりに盛り込み、読者を別世界へと引きずりこむ。阿部和重の脳内に移植された神町へと。

そして物語は、驚くべき結末へと向かって加速する。
最後のページを捲り終えたとき、重厚な物語の礎が瞬く間に雲散霧消する。
僕は、そのとき自分が於かれている状況を把握するのに、暫しの時間を要したほどだ。
またしても阿部和重の圧倒的な技巧に、まんまと翻弄されていたことを認めざるを得ない。
それは何とも心地良い敗北感である。
すべては最初の一ページ、読者を腑抜けにする要因はそこにある。
そう、三度繰り返されたあの夏(僕は三度目しか経験していない)のように。サマー・オブ・ラブの余韻とともに。

阿部和重 / ピストルズ
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テーマ : 小説
ジャンル : 小説・文学

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繁盛亭アルバイテン

Author:繁盛亭アルバイテン
ヒッピー・ボヘミアンな生活に憧憬を抱く浪速のポンコツ。
物心ついたときから寝つきが悪い。

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