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壊れた自我と漲る欲望



日本語ラップの熱心なリスナーならば、
いまこの国のハスリング・ラップがとんでもなく面白いことになっているのは、ご存知だろう。
彼らの言葉からは、この馬鹿馬鹿しい世の中に対して、ただ悲観するのではなく、
如何に知恵を絞って生き抜こうかと切磋琢磨しているのかが、うかがい知れる。
まるでアスファルトに唾を吐き捨てるかのように、自身の存在意義を吐露するのだ。
犯罪者階級の不良たちは、明確に世界と対峙している。己が俗物であることを自覚しながらも。

一転、この希世の私小説作家・西村賢太の欲望は決して「外」へは向かわない。
ひたすらに「内」へ「内」へと引きこもる。
だから、彼のような人間は記録には残らない。例えそれが小説という媒体で存在するのだとしても。
刹那主義者と言えば聞こえはいいが、一貫した倫理さえ持ち合わせていない。
危険なまでの自己完結が、じめじめと粘着質に蔓延るばかりなのだ。
それは、いかなる不良少年たちよりも救いがなく、だからこそ、どうしようもなく引き込まれる。

職なし、金なし、甲斐性なしという負のトライアングルを背負う男は、
些細なこと(それは、本当に馬鹿げている)で、同棲している女性に対して
一方的で不条理な暴力を揮い、そうかと思えば、猫なで声(実際に涙を零しながら)で許しを請う。
挙句には、女の下着を「おかず」に自慰に耽る。それがバレて、また逆上…。

そんな男にとっての唯一の楽しみが、「根津権化裏」で知られる大正の作家・藤澤清造。
貧困と精神破綻の末に、芝公園内のベンチで凍死した藤澤に、他者とは思えぬ共感を抱く男は、
女の親に借金をしてまでも、数々の物品をコレクションしようと奔走する。
その欲望の空回り具合は、金に糸目をつけずにレコードを掘りまくっている人たちにとっても、
きっと他人事とは思えないはずである。

どこまでいっても染みったれていて、惨めで、救いのない展開。
正直、なんでこんなものを読まされなければならないのか、と憤慨しそうになるが、
少なくとも、本書の中にはキレイゴトがない。
それだけでも、稀有。それだけでも、自分にとっては救いになる。

物語の終盤で、カレーを食べている男に対して、女が呟く。
「豚みたいな食べっぷりね」

この後、めくるめく一大スペクタクルが押し寄せるのだ!!!!!!
是非とも、皆様の目でお確かめください。
不快指数が沸点に達するであろうことだけは、保障いたします。

西村健太 / どうで死ぬ身の一踊り
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テーマ : 小説
ジャンル : 小説・文学

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繁盛亭アルバイテン

Author:繁盛亭アルバイテン
ヒッピー・ボヘミアンな生活に憧憬を抱く浪速のポンコツ。
物心ついたときから寝つきが悪い。

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