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トライバル・パレードの行方



この音は、肺の下部と、たわんだ飾り紐の中に隠されている、屈曲自在で、よく音の響く何本もの管との間に、
外科手術によって連絡がつけられたおかげで、彼女が呼吸する度に生まれるのだった。
細長い、優美な形の分銅のように飾り紐の先に垂れ下がっている金鍍金した金具は、中空で、
中には良く振動する薄片が入っていた。肺が収縮する度ごとに、吐き出された空気の一部は、
たくさんの管を通り、薄片を動かして、妙なる響きを生み出すのだった。


あまりに面白いので、長々と引用してしまいましたが、これは世紀の奇書と名高い
「アフリカの印象」の一場面です。
これが、イカれたマッドサイエンティストによる人体実験ではなく、
熱帯の地、アフリカで繰り広げられる陽気な余興だと言うのですから、驚きを隠せません。

本書は、アフリカの大地で展開される奇妙キテレツな見世物が、淡々と描かれた作品で、
物語に筋はなく、「場」だけが、確かな言葉によって形作られていく。
ルーセルは奇想の結実を読者の想像力には決して、委ねません。
あらゆる情景を言葉のみで視覚的、幾何学的に浮かび上がらせるのです。
頭の悪い自分なんかは、なかなか情景が浮かんでこないこともしばしば(笑)。

とにかく、読むことで何かを得られる類の本ではありませんが、
読むことでしか得られない経験というものがあるのだ、ということを教えられます。
メッセージを伝えるものだけが、文学ではない。
それを身を以って痛感しました。
サリフ・ケイタやクリフトン・シェニエみたいなキャラクターも登場しますので、
ワールドミュージックのリスナーの方々にとっても、得がたい一冊になるのではないでしょうか。

レーモン・ルーセル / アフリカの印象
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テーマ : 小説
ジャンル : 小説・文学

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非公開コメント

No title

想像力の低下が著しいここ数年です。子供の頃を思い返すと想像力の世界で生きていました。あのころの世界が恋しくもあります。

『読むことでしか得られない経験』...いいですね。現実の世界に帰って来れなくなりそう...でも、そういうの結構好きです。

No title

muさん。
ほんま、そうやねぇ。子供のときは、いくらでも頭の中で物語を思い描けたよね。
イマジナリー・コンパニオンはどこへ行ってしまったのか?
でもまだ、きっと遊べると思うよ。
遊ばないと。
プロフィール

繁盛亭アルバイテン

Author:繁盛亭アルバイテン
ヒッピー・ボヘミアンな生活に憧憬を抱く浪速のポンコツ。
物心ついたときから寝つきが悪い。

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