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LPを目指して



盗んだバイクで走り出す訳でもなけりゃ、覚えたての煙草を吹かす訳でもない。
ひたすらに肥大化する性欲を抱え込んで、意味もなく大人たちを睨んでいた、15の夏。
誰にも縛られたくないと思っていたかは定かでないが、とりあえず僕たち童貞3人は旅に出た。
1艇のゴムボートと6艇のビニールボートを携えて。目指すは琵琶湖の近江大橋。そこが出発地点だ。

そんな訳で、15の夏休み。僕たちは琵琶湖をスタート地点に定め、そこから自分たちの住む町までの
猛烈ラフティング作戦を決行したのであります。1日中パドルを漕いで、みっちり3日かかりました。
まともな船は1艇のゴムボートだけ。あとはおもちゃのビニールボートでしたから、それなりに試練でした。
琵琶湖では巨大な遊覧船に巻き込まれかけ、まったく流れのない宇治川は漕いでも漕いでも先に進めず、
おまけに宇治川ダムに行く手を阻まれ、桂川・宇治川・木津川の合流地点では数台のパトカーに追走されました。
途中、6艇のビニールボートのうち4艇が難破し、テントやお気に入りのTシャツも川底に沈んでいきました。
でも、やっぱり一番キツかったのは、宇治川ダムの崖っぷち急斜面を、ボートを担いでよじ登ったときですかね。

お巡りさんには「僕たちの青春を奪わないでくれ!」とか言って、何とか見逃してもらったんです。はははは。
「頼むから死なんといてくれよ!」と言っていた彼らの言葉は、鮮明に覚えています。ちゃんと生きてますよ。
疲労困憊していた僕たちを常に慰め、励ましてくれたのが、河原で遊ぶ子供や、橋の上の女子たちでした。
みんな笑顔で手を振ってくれたり、「ガンバレー!」ってエールを送ってくれたり、嬉しかったなぁ。
そのときばかりは、どんなに疲れていてもフルスロットルでパドリングです。オールはギンギンでしたね。
ゴールである吹田大橋に辿りついたとき、ほんの少しだけ自由になれた気がした、15の夏(笑)。

古川日出男さんの『サマーバケーションEP』を読んでいたら、ついつい当時のことを思い出してしまいました。
本書の主人公「僕」も僕たちと同じように水流を辿る旅に出るのです。僕たちとは逆で、川から海を目指します。
ただ、それだけの物語。本当にシンプルそのもの。いつもの技巧は敢えて抑制して書かれたような印象です。
古川さんの作品はほとんど読んでいますが、もしかしたら、これが一番良いかもしれません。
自分が「僕」たちと似たような夏休みを過ごした経験があるせいか、とっても心に響いてきましたよ。
魅力的な人物が増えたり減ったりしながら、旅は流れて流されて・・・、そして、遂には海に。
これは、その瞬間にしか刻むことのできないEP。僕たちはいくつものEPを積み重ねてLPを創るんです。
そこに針を置けば、いつだって物語は再生されます。聴こえませんか?色褪せることのない青いメロディが。

↓こちらが僕たちの『サマーバケーションEP(若気の至りremix)』
vacation1.jpg vacation2.jpg

古川日出男 / サマーバケーションEP
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テーマ : 小説
ジャンル : 小説・文学

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繁盛亭アルバイテン

Author:繁盛亭アルバイテン
ヒッピー・ボヘミアンな生活に憧憬を抱く浪速のポンコツ。
物心ついたときから寝つきが悪い。

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