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虐殺のホニャララ



2020年前後の、所謂ネオリベ以降の世界を描いたSF作品。
SFと言っても、伊藤計劃が見つめるのは未来や虚構ではなく、あくまでも実在の世界。
「いま・ここ」を執拗に問い質したことによって、その先に突き抜けてしまったかのような印象を受ける。
だからこそ、必然的に語り口はナイーヴに成らざるを得ない。禍々しいタイトルに騙されてはいけない。
論理と感傷が交錯する、極めて繊細な物語である。

舞台はサラエボが核爆発によってクレーターとなった世界。
後進国で内戦と民族衝突、虐殺の嵐が吹き荒れる中、先進国はテロの脅威に対抗していた。
米国情報軍のクラヴィス・シェパード大尉は、それらの虐殺に潜む「ある男」の存在に気付くのだ。

目を背けたくなるような描写(戦闘場面よりも精神の葛藤を描いた場面)がない訳ではない。
そんな読者の胸中を察するかのように「ある男」は言う。人々は見たいものしか見ない、と。
だから僕たちは、主人公の葛藤を直視しなければならない。伊藤計劃が世界を見つめ続けたように。

お前が殺したのだ、と誰かに言ってほしい。
誰かに、これは本物の罪で、本物の殺意だと言ってほしい。戦場で自分が感じたぎりぎりの感覚。
銃弾飛び交うなかで発せられる、自分はいまここに存在しているという声なき叫び。
それらが偽物ではないと誰かに教えてほしい。


哀切の銃弾が降り注ぐ行間を、僕たちは言葉と現実とを照らし合わせて突き進まなければならない。
誤解を承知で言わせてもらえば、本書はある種の諦念に基づいた、社会実験なんだと思う。
最後に「ある男」の恐るべき「計劃」を掲げておこう。

憎しみの矛先が、いまもG9に向かいそうな兆候のある国を見つけ出す。
自分たちの貧しさが、自分たちの悲惨さが、僕らの自由によってもたらされていることに
気づきそうな国を見つけ出す。そして、そこに虐殺の○○を播く。


*○○の箇所はネタバレにならないように、あえて伏字にしてあります。
 是非ともご自身の目でお確かめ下さい。

伊藤計劃 / 虐殺器官
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テーマ : 小説
ジャンル : 小説・文学

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No title

この本気になってました!

今度読もう…

No title

のぐっちさん。

伊藤計劃さんは癌のため、34歳の若さで亡くなっていて、
この本もすべて病室で書かれたものやねんて。
だから、という訳でもないんやけど、そこらの作家とは気迫が違います。
是非とも読んでみてね。凄いよ。
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繁盛亭アルバイテン

Author:繁盛亭アルバイテン
ヒッピー・ボヘミアンな生活に憧憬を抱く浪速のポンコツ。
物心ついたときから寝つきが悪い。

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