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野生の探偵たち

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チリの詩人・小説家、故ロベルト・ボラーニョによる上下巻850頁の大長編。

1970年代にメキシコで発足された前衛詩人集団<はらわたリアリズム>。
ある日、その首謀者である二人の若者アルトゥーロ・ベラーノとウリセス・リマは、
1920年代に失踪した女性詩人を求めて、砂漠へと向かう。
そして彼らもまた、女性詩人と同様に一切の消息を絶つのである。
唯一の手がかりは、女性詩人が残した一編の謎めいた詩。

物語は、アルトゥーロとウリセスに追従したひとりの青年の日記(第一部、第三部)と、
彼らの足跡を「見た」と言う53名の証言者へのインタビュー(第二部)によって構成される。
このインタビューというのが、どうにも一筋縄ではいかない。

各人の証言(エピソード)は抜群に面白いものの、彼らが言葉を費やせば費やすほどに、
失踪者たちの思惑や全体像が紗に覆われていき、物語の核心からは遠ざかるばかりなのだ。
以前ボラーニョの短編集『通話』を読んだときに、「人間の一生そのものがコラージュである」との
啓示を得たが、本作に於いては、コラージュの集合体が織り成すカオスの域にまで達している。
仮に多くの情報を得たとて、僕たちが真に知りたいことなどは、ことごとく指先をすり抜けていく。
つまるところ、個人史なんてものは当事者本人にしか語り得ないものなのだ。
僕という人間について、僅かな誤差もなく証言できる他者が、この世に何人存在するというのか?

実のところ、本書は小説の仮面を被った詩なのかもしれない。
そして、詩それ自体には何の意味もないのだろう。
だが、ロベルト・ボラーニョは指摘する。
詩人の精神は現実すら歪めるのだ、と。

装丁に使用されたジュール・ド・バランクールの『衆愚の饗宴』が、本書の怪しい魅力を端的に伝える。
言うまでもなく、本年度のハイライト。

ロベルト・ボラーニョ / 野生の探偵たち
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テーマ : 小説
ジャンル : 小説・文学

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No title

表紙の絵もなかなかのものですね。
チリの裸族でしょうか~??なんとも絶妙な絵ですね。
お互いに関心があるようでないような、周りの存在があるようなないような。
しかし、傍から見れば全てひっくるめて風景というか。
小説の内容も興味深いです。

No title

muさん、コメントありがとう。
装丁、素晴らしいでしょ。見事に内容を示唆しています。
白水社さん、良い仕事するなぁ。
世界の音楽同様、世界の文学にも興味深々ですよ。
ボラーニョは是非とも『通話』から読んでみてくださいな。

No title

装丁画が気になっていたら、『通話』のロベルト・ボラーニョだったんですね。
少々度胸が試されそうですが、アルバイテンさんですら「カオスの域」だという
この大長編もぜひ挑戦してみたいです。

No title

questaoさん、こんばんは。
装丁画、本当に素晴らしいですよね。これだけで買っても損はないです。
questaoさんの仰るとおり、少々、忍耐の読書になるとは思いますが、
最後にはすべてを上回る感動が押し寄せてきます。
もちろん、ただ難解なだけではなく、タランティーノばりのB級アクションも炸裂してますよ。
ネタバレするといけないので、あまり詳しく書けませんし、僕の誤読かも知れないのですが、
本書は四次元の世界を垣間見せてくれるんです。ほとんど中沢新一の世界です。
それにしてもquestaoさんの「バリスター部長」コメントは素晴らしすぎますよ。
マジに興奮しました(笑)。自分が物書きを名乗るのが恥ずかしくなるくらいの文章でした。
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繁盛亭アルバイテン

Author:繁盛亭アルバイテン
ヒッピー・ボヘミアンな生活に憧憬を抱く浪速のポンコツ。
物心ついたときから寝つきが悪い。

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