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狂い咲きDARUMA-SOUND

daruma2.jpg

心から尊敬するアーティスト、だるまさんから、実に5年ぶりのフルアルバムが届きました。
彼に停滞の2文字はありません。サウンド、リリック、フロウ、すべての面で進化/深化を遂げています。

韻踏合組合時代から、所謂ラップ・グループのいちMCという範疇には収まりきらない個性を放っていた
オーヤ氏ですが、「だるまさん」と改名し、ソロ活動を始動して以降は、もはや日本語ラップという
枠組みからもフレームアウトする、独自の達磨道を探求してこられたように思います。
彼には彼特有の哲学や倫理観があり、それは新感覚のポップ・ミュージックとして、見事に結実しています。
つまりは「新たなモノを生むためにも、叩っ壊せ、な~なな、叩っ壊せ、な~なな」という訳なんです。

さて、早速、新作『SKILL & CONCEPT』に耳を傾けてみましょう。
冒頭、エレクトリック・ブギ調の「Back Again」で、痛烈なカムバック宣言を打ち上げたあとは、
アキオ・ビーツやフクサンといったビート職人の用意した多種多様な食材を元に、奔放自在な韻と
フロウで味付けをしていきます。中でも、女性という生き物を地球外生命体になぞらえて恐怖心を煽る
「宇宙人」シリーズ、軽妙洒脱なスウィング・ジャズ・ラップ「永遠を約束」、驚くべきピアノの弾き語りラップ
「エリーゼの為に」、そして、民族的なサウンドをバックに、コテコテの関西弁で罵詈雑言を捏ね繰り回す
「まだ反抗期」あたりは、あまりに独特。独特すぎて、ときにリリックが聴き取れないこともありますが、
普段からワールド・ミュージックに慣れ親しんでいる身からすれば、それも寧ろ心地良いって感じです。

「公」に擦り寄りすぎて、「個」を滅してしまうアーティストは無数に存在するとは思いますが、
彼のように、「個」を突き詰めた結果、「公」にアピールし得る懐の深さを獲得した人ってのは、稀有ですよね。
エスニックな要素をバッサリと切り捨てたM.I.Aの新譜に納得しかねた方は、本作を聴いて溜飲を下げてください。
僕たちが、「人間」という生命の一形態に過ぎないということを、しっかりと思い出させてくれますから。
同時リリースされた過去音源集『RHYME & IMPACT』や、真摯な人柄が伝わってくるブログ『だるまさん日記
なども、要チェックですよ。ひとりでも多くの方に、DARUMA-SOUNDを聴いてもらいたいものです。

最後に、だるまさんへ。
いつもアナタが送ってくれる作品から、僕はどれほどの刺激をいただいていることか。
ほんまに、ありがとうございます。お世辞抜きで、今回も素晴らしいアルバムでしたよ。

だるまさん / SKILL & CONCEPT 2007-2010
だるまさん / RHYME & IMPACT 2004-2007
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ターキッシュ・ブレス・ケア

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ともはねよ かくても踊れ こころ駒 みだのみのりと きくぞうれしき」(一遍上人)

盆踊りのルーツとも言われる「踊り念仏」の特徴は、集団で「飛んだり、跳ねたり」するという点。
このような踊りによって、参加者に恍惚感と自己開放をもたらすことを目的としているそうですね。
「踊躍」と「念仏」を合一化し、心身の跳躍を通じて「法悦」を得るというのが、一遍上人の踊り念仏。
「とも跳ねよ、かくても踊れ」と喝破した一遍の思想からすれば、「飛んだり跳ねたり」して踊るという
こと自体が、「踊り念仏」の原点、と言うか、核心なのでしょう。

で、この「飛んだり跳ねたり」という行為を「回転舞踊」に転換すれば、イスラム教の神秘主義哲学になる。
・・・・・・・・・・・・と、言うのは、まったくもっていい加減な私の持論です。
スーフィズムでは禁欲的で厳しい修行を行い、また白い布状の服を身につけて一心不乱に回るんでしょ?
それによって、神との一体化を求めたと言うのですから、「踊り念仏」と似たようなものでしょ?え、違う?
まぁ、いずれも自我をかなぐり捨てよ、ってことですからね。細かいことは気にしない、気にしない。

さて、そんな騙し騙しの展開を経てぇ~の~、AKA GUNDUZ KUTBAY 『ASK 1934 -1979』。
スーフィの師Gavsi Baykaraに師事したネイ(葦笛)奏者の生涯を綴った復刻編集盤です。
葦笛の内部を直流する息吹によって、聴衆の眼前に聖域を招喚させるかのような、深遠なる独奏。
一片の曇りもない幻妙な佇まいは、まるで我が国の虚無僧の如し。嗚呼、無情・・・。
これは素晴らしき音の清涼剤=ターキッシュ・ブレス・ケア。
いや、魂を浄化するという意味ではソウル・ケアかな。
年間ベスト・リイシューどころか、生涯保障の2in1packですよ。

AKA GUNDUZ KUTBAY/ ASK 1934 -1979

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愛しさと切なさと遣る瀬なさと



こんなことをブログで宣言する必要性は微塵もないのですが、私は無類の熟女フリークです。
熟女には、他人を思いやる優しさがある。温もりがある。そして、包容力がある。
何よりも、年齢を重ねることで熟成した、究極の美があるのです。
彼女たちの目尻に刻まれたシワの一筋一筋には、達観した叡智が刻み込まれています。
嗚呼、麗しのマダム。俗に言うオバハンと熟女は、似て非なる存在ですから。
そこんところ、お間違えのないように、お願い申し上げます。

ここで、グーグーシュさんにご登場願いましょう。
ペルシアン熟女界の最高峰に位置する、究極のマダムです。
05年のスタジオ録音。熟女の熟女による熟女の為の『マニフェスト』。
どこぞの政党によるバラ撒き政策とは、訳が違います。すいません、適当です。
まぁ、しかし、熟練の極上歌謡アルバムに仕上がっていることは確かです。
この方、1951年生まれだそうですよ、あーた。間もなく還暦を迎えるのですよ、あーた。
容姿の美しさもさることながら、熟れに熟れた妖艶な歌声には、フリークでなくとも感涙必至。
ペルシャ特有の深みのあるメリスマや、バックを支えるゴージャスな生演奏も素晴らしいです。

が、しかし、なのであります。

彼女が熟女の魅力を存分に発揮しているのは、中盤5曲目まで。
何を血迷ったのか、後半にかけて無理な若作りが目立つようになります。残念至極。観念地獄。
トランシーな四つ打ちにハード・ロッキンなギターを被せた6曲目なんて、目も当てられません。
娘と同じようなミニスカートを穿いて、必死に若さをアピールしている勘違いマダムを見たときと同様に、
何とも切なく、遣る瀬ない気持ちになってしまいました。過ぎ去った刻に想いを馳せたくなる、複雑な作品。

GOOGOOSH / MANIFEST

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来年・・・ひとりじゃない



突然、パパとママが大喧嘩を始めたとしたら、キミはどうする?
「パパ、もうやめてよ」「ママ、仲直りしてよ」そんなキミの言葉は到底、届かない。
パパもママも赤鬼さんみたいに真っ赤な顔をして、互いを罵り合っている。
早く何とかしないと、すぐにでもキミの頭上を、食器の矢が飛び交うことになるよ。
さぁ、どうする? どうする? さぁ。さぁ。

ボクは一枚のCDを手に取った。

そうさ、キミは賢明だ。キミの思考は正しい。選択は正しい。
オーディオにそのCDを放り込んで、あとはプレイ・ボタンを押すだけでいい。
ほら聴こえてきたよ。美しいハーモニーが。ムギとムギママの幸せの「2birds」が。
ほらほら。パパとママの怒声が静まったよ。次第に表情も緩んでくるに違いない。
もう心配は要らない。ありったけのオモチャを抱えて、お庭にでも出てごらん。
来年の今頃、キミの隣には、愛しい存在が。弟か妹か、それは神様だけが知っている。

そんな訳で、アイスランドのSSWムーギーソンによる04年リリースの3枚目。えも言われぬ多幸感が最高です。
ブルース、フォーク、カントリー、ブラック・ロック風と、実に多様な音楽性を聴かせてくれるんです。
ギターの弾き語りが主ですが、耳を澄ませてみると、珍妙な電子音や自然音が聴こえてきて、思わず笑顔に。
何と言っても、4曲目。前述の、恋人とのデュエット曲「2birds」が素晴らしいんです。
愛を語らう際のBGMとしては、世界最高水準の一曲でしょう。もちろん、我が家でもヘヴィ・プレイですよ。ええ。
日本ではあまり聴かれていない印象がありますが、本国のアイスランディック・ミュージック・アワードでは、
ビョークの『メダラ』を抑えてのベスト・アルバム賞ほか、各賞を総なめにしてるんですよね。ペロペロ。

MUGISON / mugimama is this monkey music?

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ディアンジェロの向こう側



D'Angeloが『Voodoo』をリリースした2000年以降、米国R&Bシーンは停滞を余儀なくされているですと?
そりゃあ早計ってもんですぜ、ダンナ。何故なら、ERYKAH BADUの『New Amerykah』シリーズがある。
そして、すべての楽器を自分で演奏し、歌い、録音する才女、Georgia Anne Muldrowがおりますから。

試しに、彼女が2006年にリリースしたファースト『Olesi:Fragments Of An Earth』を聴いてみて下さい。
現在のブラック・ミュージックに於ける、最もラディカルな響きを感じることができる筈です。
まるでフリー・ジャズのR&Bバージョン、もしくはアリス・コルトレーンの過剰なアップデート。
FLYING LOTUSと同様、一億光年先へと先走ろうとする黒人音楽でありながら、ブルースの精神を
しっかりと内包してもいる。一枚のレコードの中に、黒人音楽の過去と未来が、生々しく蠢いています。
オーセンティックなバンド演奏に渋いラップを乗せたコンゴ人MC、BALOJIも凄く格好良いと思いますが、
自分の場合は、一癖も二癖もあるGeorgiaのような歌い手にこそ、惹かれてしまう困った性分なのです。
D'Angeloが確立したミニマル・ファンクの向こうを張る、凄まじく野心的な大傑作ですよ。

Georgia Anne Muldrow / Olesi:Fragments Of An Earth

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ホニャララ・トーク

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『まだ寝ません』を始めようと思ったのは、『崖っぷち!レコ・オヤジ69』というブログに出会ったからです。
かつて、東京レコ・オヤジさんが運営されていた、伝説のブログです(残念ながら今は見ることができない)。
そこに渦巻いていたは、音楽に対する溢れんばかりの愛情と、愛しすぎるがゆえに生ずる世間との齟齬。
「見せるブログ」という明確な意志の元にアップされた無数のエロ・ジャケも、痛快そのものでした。
ご本人は「文才がない」と謙遜しておられましたが、とんでもありません。
下ネタ発・ダジャレ経由のユーモラスな表現は、僕を幸福な気分にさせてくれましたから(笑)。

アフロ・エッセンス滴る音楽や、ご子息の成長記録などを心地よいビート感覚で綴る、questaoさんの
パンゲア食堂繁盛記』や、架空のアイドル・ユニットを巧みな妄想表現によって現出させた、ころんさんの
ころんの音楽探訪』などからも、とてつもなく刺激を受けました。
ここですべてを挙げることはできませんが、愛読しているブログは他にも多数あります(リンク参照)。
みなさまに共通するのは、必ずしも情報「だけ」に還元されない表現、と言えるのではないでしょうか。
そこに各ブロガーさん達の、キラリと光る批評精神が宿っているような気がします。

さて、今回取り上げますのは、マンガの批評本『マンガ・ホニャララ』です。
マンガという、突き詰めればキリがないようなジャンルに挑みながらも、決してオタク的ではない、
自由闊達な表現/批評が魅力的な一冊です。あくまでも自分の読みたいように読む、そこが肝心なんですね。
そんな中にも「宮崎駿は兵器好き」とか「ドラえもんの物語はスネ夫が引率する」などのハッとする指摘も
あります。何よりも僕が本書に惹かれるのは、マンガを批評する表現自体が、極めてマンガ的であるということ。
要するに、レヴューそのものが、充分にエンターテイメントに成り得ているってことなんですね。
当ブログ『まだ寝ません』もそうありたいと、日々、試行錯誤の連続であります。
ちなみに著者のブルボン小林さんって、芥川賞作家のホニャララ先生のオルター・エゴなんですよ(笑)。

ブルボン小林 / マンガ・ホニャララ

テーマ : 小説
ジャンル : 小説・文学

語り部は祖父



今年86歳になる祖父と話をしていると、唐突に時間軸が拉げる瞬間がある。
2010年いま現在の情景が、祖父の頭の中でぐるぐると巻き戻され、戦時中に着地する。
伊丹空港から飛び立った旅客機と、B-29が交錯し、祖父の顔から表情が消える。
そうかと思えば、散歩中に偶然すれ違った人妻に、かつての恋人の面影を重ねたりもしている。
DJがクロスフェーダーを巧みに操るように、祖父の「語り」には過去と現在がミックスされるのだ。

ある時、僕の妻に向かって祖父が言った。
「こないだまで、ここら辺は車よりも牛のほうが多かったんやで。奥さん、知ってるやろ?」
もちろん、祖父の言う「こないだ」とは、厳密には80年くらい前の日本の原風景を指している。
当時を知る由もない妻は、笑顔でこう切り返した。
「牛に乗ったおじいさんとお会いしたかったですわ」

或いは、右足に入ったボルト(骨折が原因)を指して、祖父はいつも顔をしかめるんだ。
「足に入ったこれ、こっちのカネやったら良かったんやけどなぁ」
そう言って、右手の親指と人差し指で、嫌らしい輪を作る。

また、祖父は60年くらい、ずっと日記(と言うか、日誌)を記していて、そこには
朝起きて食べた果物の種類や、その日の相撲や野球の試合結果などが詳細に記録されている。
にもかかわらず、僕らと出かけて楽しく食事をしたことなんかは、すっぽりと抜け落ちていたりする。

祖父の言う「昨日」とは数十年前の出来事であり、祖父の言う「彼女」とは亡くなった祖母のことであり、
そうではなかったりで、計らずも聞き手は、幾重にも折り重なった「時間」の襞へと誘われるのだ。
そこに真実も嘘も希望もハッタリも混入されるのだから、ほとんど不思議の国のアリス状態である。
しかし、80年も生きてきた人間が「語る」というのは、そういうことなんだと思う。
膨大に過ぎ去った時間の中に立ち、「いま」を「語る」ということは。

小島信夫さんが90歳で書き上げた『残光』の中でも、時間の迷宮が展開されている。
東京の片隅で一人暮らしをする「ぼく」は、地方の介護施設に居る妻との思い出を辿り、
そして、書き、そして、読み、また書いては、思い出す。膨大な過去を参照し、いまに転化する。
ほとんど身辺雑記とも言える記述の中で、突然、読者に語りかけるような文体が挿入されたりもする。
なんと、あっけらかんとアヴァンギャルドなことか!これこそが90年も生きてきた人間の「語る」作品なのだ。
残念ながら本書は小島さんにとっての遺作となったが、「語り」はいたるところに存在するのだろう。

そう言えば、先日、母からメールが来た。祖父の日誌に、以下のような記述を見つけたそうだ。
6月28日(月)。入れ歯ネタ、病院で大ウケ。

小島信夫 / 残光

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Sex on the beach



BITCH BITCH BITCH BITCH BITCH BITCH BITCH BITCH BITCH BITCH BITCH BITCH BITCH 
BITCH BITCH BITCH BITCH BITCH BITCH BITCH BITCH BITCH BITCH BITCH BITCH BITCH 

GHETTO TECH、MIAMI BASS譲りの野蛮なベースラインを終始キープしつつも、強烈にアシッディーな音響や
山下達郎などの和モノ・ネタが不意に尻アナに挿入される横浜産のリアル・アヴァンギャルド。

BITCH BITCH BITCH BITCH BITCH BITCH BITCH BITCH BITCH BITCH BITCH BITCH BITCH 
BITCH BITCH BITCH BITCH BITCH BITCH BITCH BITCH BITCH BITCH BITCH BITCH BITCH 

もちろん首謀者はハマの尻サグ番長こと、KES改めG-PRINCEさん。どんだけBITCHを連呼すりゃ気が済むの?
徹底したボディ・ミュージックの裏に隠された、僅かな知性と巧みな音響処理で、紳士の域に到達しています。
浜辺に実る禁断の果実を食べて、アダムとイヴとともに、エデンの園から追放されましょう!

G-PRINCE A.K.A KES / DIAMONDS AND PEARLS

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夏の日の2010

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買い物を楽しみながら、社会貢献もしたい。そんな時にはコーズブランド商品を買えば良い。
銭湯に行きたい、でも女性とニャンニャンもしたい。そんな時にはソープランドに行けば良い。
豚カツが喰いたい、でもカレーも喰いたい。そんな時にはカツカレーを喰えば良い。
ムラーユを聴きたい、でもターラブも聴きたい。そんな時にはORKES NUR EL SURAYYA MEDAN。

暑い季節にピッタリの心地良いイスラム系海洋音楽で・・・まったりとしたオルガンが・・・うう・・・。
あきまへん・・・暑い・・・暑すぎる。この茹だるような暑さのせいで、何も書けなくて・・・夏。

ORKES EL SURAYYA MEDAN / Anak Durhaka
ORKES NUR EL SURAYYA MEDAN / ORKES NUR EL SURAYYA MEDAN

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私の優しくない先輩



はじめに断っておきますと、主演の川島海荷さんのことも全然知りませんでしたし、
はんにゃの金田くんの芸風は苦手ですし、原作者の日日日くんの小説も読んだことがないですし、
山本監督の人気アニメ・シリーズ『涼宮ハルヒの憂鬱』にも、当然のように、全く興味がありません。
要するに、僕がこの映画を好きになる要素は、当初、微塵もなかったということです。
では、なぜに劇場まで足を運ぶ気になったのかと言いますと、主題歌が「majiでkoiする5秒前」だから。
いまや広末涼子さんの汚点のひとつに挙げられるであろう「MK5」を今更ひっぱりだしてくるセンス。
それこそを、この目で確認したかったのです(笑)。

で、結論から言いますと、素晴らしい映画です。
ストーリーだけを抜粋するとバカバカしいのですが、
そのバカバカしいストーリーに甘えていない製作陣に、頭が下がります。
簡単に言うと『セカチュー』の系譜に位置する難病モノなんですが、僕の涙腺を刺激したのは、
彼女が重い病気を抱えているからでも、弱音を吐かず苦しみに耐える姿でも、実らぬ恋の切なさでもなく、
ただのでんぐり返しや、唐突なミュージカル・シーンや、嘘みたいな夕日や、地上から数センチ浮く姿なんです。
そういう「筋」とは無関係の細部を丁寧に描くことで、彼ら登場人物たちに、ちゃんと魂が宿るのでしょう。
難病と闘うという「筋」を真っ当に歩むからこそ、彼女が人間になるという訳ではありません。

川島海荷さんの、ルックスと内面のギャップも面白い(もちろん演技上の)。
キモくてウザイけど実は・・・な金田くんもすごく良い。芸人としては苦手ですが、役者としては本当に良い。
普段は「キモイ」「ウザイ」とかいう言葉にはウンザリさせられますが、キモくてウザくて何が悪い!って
思わせてくれた金田くんに完敗ですね。何と言っても川島海荷さんに自分の身体がクサイってのを認識させた
功績はあまりに大きいですよ(笑)。それこそが、本当の優しさってもんでしょう!

そして、そして、お待ちかねの「majiでkoiする5秒前」ですよ、みなさま。この時点で、僕はもう本作の虜。
三十路の男が、こんな少女目線の映画を熱く語るということ自体がキモくてウザイ・・・ってオチで(笑)。
もちろん鑑賞後は、妻とふたりで「majiでkoiする5秒前」のアカペラ大会に雪崩れ込みました。

とりあえず、こちら↓をご覧下さい。
http://www.youtube.com/watch?v=rPKrFCQwyg4

山本 寛 監督 / 私の優しくない先輩

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numb阿弥陀仏



前回のオマール・ソウレイマンを聴いて思い出したのが、ジェフ・ミルズの諸作と本作。
日本語ラップの草分け的存在であるブッダ・ブランドのサウンド・エンジニアを務めていた
ナム・スートラさんが、numb(ナム)と改名して放った02年のソロ・デビュー作です。

元々ヒップホップ・クルーの裏方を務めていた彼の生み出すサウンドは、ヒップホップ特有の猥雑な
ミックス感覚を滲ませつつも、それらを過剰に変質させたかのような、得体の知れなさを孕んでいます。
神経質な音の微粒子が、次第に肉厚のグルーヴを獲得していく様は、スリリング極まりないです。
ノイジー且つ、ときに観念的とも思える音塊が、涅槃へと昇華されるのです。脅威のエレクトロニック経典。
日常生活では決して耳にすることがないような奇妙奇天烈な音の連なり、その内向きのスパイラルが
やがて外界へと突出する瞬間、自分の肉体が透けていくような錯覚に陥ります。そう、ジャケのように。

所謂エレクトロニカと呼ばれるジャンルに於いて、レイ・ハラカミの『レッド・カーブ』とは間逆の
ベクトルから、しかし同様に、極みに達した稀有な作品だと思います。
性風俗には寛容なクセに、ドラッグ・カルチャーには目くじらを立てる日本では、
この手の危ないトリップ・ミュージックは敬遠されるのでしょうね。
未だに彼に続くような人(シンク・タンクの面々くらいでは?)が現れないのは当然のこととして、
ナムさん自身も長い沈黙を守っておられます。

numb / numb

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シリア戦線異常あり!



走り出したら止まらないのがキアヌ・リーヴスの乗ったバスであり、
やめられない止まらないのがカルビーのカッパ海老せんであるならば、
歌い出したらキリがないってのが、シリアの暴走特急オマール・ソウレイマンである。

リミット知らずのスピード感は、もはやテクノの領域と言っても過言ではない。
ハード・ミニマル全盛時のジェフ・ミルズが、勢いそのままに砂漠にまで到達したかのようだ。
モロッコのレッガーダやスタイフィとの同時代性や共通項を見出すことも可能だが、
こちらは更に肝が据わっていると言うか、ドンギマっていると言うか、ヤクザな感じである。

縦横無尽に飛び交うパーカッションやドラッギーなシンセサイザーの音。
それらを迎え撃つ、オマール兄貴の豪放磊落なアジテーション。
暑苦しいにも程があるハードコア・テキ屋スタイル。
ライブゆえの昂揚感も凄まじい。
文句なし、2010年上半期のベスト1。

ちなみにリリース元は悪名高き(?)サブライム・フリークエンシーズ。

OMAR SOULEYMAN / JAZEERA NIGHTS

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ポジティヴシンキングの末裔



枕に額を預けて目を瞑った。眠りの底なしの沼に沈みそうになる。
このまま性器をまさぐり出せば俺はマスターベーションを避けられないだろう・・・「糧」より

性行為の世界には、意図的に「焦らし」を楽しむプレイがあるそうですね。
昂ぶらせるだけ昂ぶらせておいて、中断。オーガズムに達するかという寸前で、中断。その反復。
受ける側にしてみたら拷問に近い苦行を強いられる訳ですが、それもまた御一興。
これを読んでくれている方の中にも、「そういうの嫌いじゃない」って仰る方もいらっしゃる筈です。
そんなアナタにオススメしたいのが、木下古栗さんの『ポジティヴシンキングの末裔』。
短編「教師BIN☆BIN★竿物語」で文壇を唖然とさせた新進気鋭の作家による、初の作品集です。

まったく先の読めない物語に突如として挿入される性的描写の数々。
訳のわからん人間どもが、訳のわからん事を考え、訳のわからん行為に耽る。
そのすべてにエロの要素が含有されているのですが、必ずしも読者をイカせてはくれません。
宙ぶらりんになったエロ。空虚なエロ。寸断されたエロ。著者は一体なにがしたいのでしょうか?
まぁ、しかし、先に述べたようにその手の性癖がある方にとっては、タマらないものがあるでしょう。
当ブログの「イサーンの女」や「バリスター部長」あたりにアンテナが反応したという好事家は是非。

誠に突然ですが、先生のペニスを殴らせてはいただけないでしょうか?「ミドルエイジ・クライシス」より

木下古栗 / ポジティヴシンキングの末裔

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濡らして打つは舌鼓



コース料理にはストーリーがある。
前菜→スープ→旬物→メイン→デザートという道のりは、決して平坦ではない。
シェフの魂と技巧を凝らした絶品料理の数々に、挑み、喰らう。
ときに涙し、ときに笑い、ときに絶句しながら、完食というゴールを目指すのだ。
すべてを食した後には、フォークの先に新たな地平が広がる訳である。
古代ギリシャの哲学者ソクラテスは言った。
「食べるために生きるな。生きるために食べよ」

短編小説はコース料理である。
はじまりの一編から終わりの一編に至るまでの道のりは、決して平坦ではない。
作家の魂と技巧を凝らした絶品小話の数々に、挑み、没入する。
ときに涙し、ときに笑い、ときに絶句しながら、読了というゴールを目指すのだ。
すべてを読み終わったあと、言葉の向こうには未踏の領域が広がる訳である。
現代日本の低所得者アルバイテンは言う。
「読むために生きるな。生きるために読め」

さて、今回挑むべくコース料理は、トマス・ピンチョンの初期短編集『スロー・ラーナー』。
ピンチョンと言えば、世界一難解で、世界一面白い作品を書くことで有名な、超絶技巧派です。
その難解さ、重厚さ故に、自分は代表作『V』も『重力の虹』も途中で匙を投げてしまいました。
そんなヘタレ人間でも楽しく味わえるのが本作品なのです。まず短編というのが、非常にありがたい。
とは言いましても、ピンチョンのマッドサイエンティストぶりが薄まっている訳ではありません。
例によって荒唐無稽で、超科学的で、ホラ吹きで、つまりは最高に美味しい小話が満載ってことです。
スタイリッシュなスパイ物や、狂ったダーク・ファンタジーなどが、読者の舌を濡らします。
ちなみにドープな装丁は、大竹伸朗画伯の『パズルパンクス2006』の断片です。ごちそうさまでした。

トマス・ピンチョン / スロー・ラーナー

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第三の波

atkins.jpg

テクノの反乱は、それを認めようが認めまいが“第三の波”の代理人である。
それは消滅したりしない、むしろ増えていくだろう。彼らは来るべき文明の先導者なのである。

上記は1980年に出版されたアルヴィン・トフラーの『第三の波』からの引用なんですが、
この印象的な一説が、テクノ・ミュージックが狼煙を上げる発端になったとのことです。
もちろん当の経済学者が指摘する「テクノ」とは、科学技術のことであり、音楽ではありません。
しかし、このラインに胸を打たれたデトロイトの黒人青年が、チープな機材で作った自らの楽曲を
テクノと呼び、類い稀な才能と情熱で、そのサウンドと呼称を周囲に宣布したらしいのです。
それがホアン・アトキンス。デトロイト・テクノのオリジネイターと言われる人ですね。

彼の初期作品には、P(P-Funk,Prince)直系の馨しいファンクネスが横溢しています。
昨今の白いテクノではヌケない私ですが、クラフトワークをバックにプリンスが腰をクネらせているかの
ようなアトキンスの艶かしい音楽には、否が応でもエリエールのお世話になってしまいます。
なんと言っても白眉は「Night Drive」でしょう。まるでマシンビートとファンクベースの不浄なる情交です。
極めつけは、官能的なダーク・エレクトロ・サウンドの深淵から響くアトキンスのピロー・トーク。

黒さのなか黒さのうえで黒さをくぐり抜け / 俺はドライヴしている
夜のドライヴァーは自分のことを / ガラスを這いずる蛇のように感じている


この曲がなければ、URもMOODYMANNもFLYING LOTUSさえも、今とは違った表現をしていたかも。
ちなみにヴァイナルで聴くと、黒さが増します。って、あっ、うわっ、エリエール、エリエール・・・。

MODEL 500 / CLASSICS
Juan Atkins / TIMELESS

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ジャンル : 音楽

リリーも愛したオルガン奏者



こうも毎日ジメジメしていやがると、生乾きの洗濯物と一緒に心にまでカビが生えそうだぜ。
何とか気分だけでも昂揚させてくれよ、ってことで取り出したのがジャマイカのオルガン奏者。

嗚呼、なんて素晴らしいんだ、ジャッキー・ミットゥさんよ。
鷹揚で、土臭い音色を響かせるオルガン・プレイを聴いていると、空調なんて必要なくなるぜ。
磐石のリズムセクションは、もちろん、お馴染みのスライ&ロビー。
プロデュースはバニー・リーで、編集は信頼保障のブラッド&ファイア、ってことで完璧。
控えめなダブ処理が、じわじわと五臓六腑に染み渡るぜ。
この懐の大きな男臭いサウンドに、UKのおてんば娘リリー・アレンも惚れ込んだんだろう。
気持ちは分かるぜ、リリーちゃん。ジャッキーをサンプリングしたキミの楽曲も最高だったね。
本作を繰り返し聴いているうちに、東淀川の上空には妄想の青空が広がってきたんだよ。
もう梅雨なんて、怖くないんだ。ありがとう、ジャッキー・ミットゥ。やっぱりアンタ、最高だぜ!

Jackie Mittoo / Champion in the Arena 1976-1977

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追悼・Rammellzee



去る6月29日、米国ヒップホップ・シーンの異端ラメルジーが亡くなられたようです。
ラメルジーはニューヨークで活動してきたグラフィティ・アーティストであり、
ラップ・ミュージシャンであり、パフォーマンス・アーティストでありました。
彼の難解きわまるゴシック・フューチャリズム思想に、首を傾げた方も多いのではないでしょうか?
その所為ですかねぇ、最後まで正当な評価を得られなかったような印象があります。

今回は追悼の意を込めて、不遇の天才・ラメルジー関連の作品を取り上げてみようと思います。
しかし、単純に彼のソロ作を取り上げたところで、天国の本人から「ふん、つまらねぇ」と嘲笑される
のは目に見えているので、ここでは彼がちょこっと客演した程度の作品を紹介しようじゃないかと。

そんな訳で、デス・コメット・クルーです。80年代初頭のニューヨークの伝説として語り継がれるバンドです。
これは音の化学実験であり、当時の雑多で猥雑で混沌とした雰囲気を真空パックした驚くべき作品なのです。
アンディ・ウェザーオールやサン・ラやエイフェックス・ツインやスーサイドやDJシャドウやディス・ヒートを、
ごちゃ混ぜにしてダンスフロアに投下したようなハイブリッド・サウンド。
この騒々しく妖しい作品に、若かりし日のラメルジーがMCとして参加している訳ですが、
ここでラップをブチかましたことが、彼の行く先を暗示していたと言っても過言ではないような・・・。

僕がこの世に生を享けた時代のレコードにもかかわらず、いま聴いても未来の音楽に思えます。
なにはともあれ、Requiescat in Pace。

DEATH COMET CREW / THIS IS RIPHOP

テーマ : 音楽
ジャンル : 音楽

女一匹、どこまでも

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伝説のトラック野郎としてならした、亡き父のデコトラを受け継いだ奈美(吉沢明歩)。
気っ風の良さと確かな腕前で、荷主たちにも大人気の彼女を慕って来たのが、
トラッカー相手に身体を売って生きている桃香(今野梨乃)だった。
彼女の「まじめに生きたい!」という一途な気持ちにほだされて始まった凸凹コンビだったが、
ある日思いも寄らない事件に巻き込まれてしまい…。

なんていう、あらすじを添付したところで本作の魅力は一切伝わらないでしょう。
ストーリー自体はベタな人情喜劇で、それ以上でもそれ以下でもありませんから。
そもそも自分の好きな映画は、どれもストーリーなんて紙芝居のようなものばかりです。
『タクシー・ドライバー』『はなればなれに』『コフィ』『鉄男』『狂い咲きサンダーロード』etc。
肝心なのは、単純極まりない話を、どう見せてくれるかですよね。
つまりは映画も小説も、「筋」ではなく「場」を描いたものに惹かれるのです。
そして本作『デコトラ・ギャル奈美』もまた、映画にしか成し得ない奇跡を目の当たりにさせてくれます。

それは例えば、吉沢明歩の究極のツンデレ・・・ではなくツンケン演技であり、75分後の笑顔であり、
悲しみのセックスであり、「キラキラ光る、夜空の星よ」であり、子宮としてのデコトラであり、
何と言っても、もう本当に奇跡としか表現しようのないラスト・シーンの神々しさであったりする訳です。
このようにダラダラと言葉を連ねたところで、実際に観ていただかない限りは伝わらないとは思います。
騙されたと思って、レンタルビデオ屋の邦画とAVコーナーの狭間の死棚に目を向けてください。
そこで「奈美」は、毅然たる態度でアナタを迎えてくれる筈ですから。
彼女のあまりに切ない「抱いて・・・」の一言に、涙を堪えきれなくなる筈ですから。

城定秀夫 監督 / デコトラ・ギャル奈美

テーマ : 映画
ジャンル : 映画

創造する言葉



ひとり暗中模索しながら好物を掘るのも、もちろん楽しいのですが、
どうしても暗黙の制約を受けてしまうと言いますか、偏った世界に陥ってしまいがちです。
そういう時こそ、皆様のレコメンドが、自分を思わぬ場所へと導いてくれるものです。
そんな訳で、こちらはquestaoさん(祝・パンゲア2号館開店)に教えていただいた一冊であります。
偉大な現代美術作家・大竹伸朗さんのエッセイ集ですね。

読書をしていて気になった箇所なんかには付箋を貼ったり、アンダーラインを引いたりするのですが、
この本はそういう箇所があまりに多すぎて、それこそ読後はコラージュ集のようになってしまいました。
大竹さんの言葉には毒や棘があっても、不思議と傲慢なところがないのです。
彼は絶対に「わからないこと」に対して、知ったかぶりをしません。
「わかった」気になった時点で、人間の成長は確実に止まる。
「わからないこと」がたくさんあるからこそ、人は考え、創造/想像するのでしょうね。

正直テーマなど、どうでも良かった。考えてもテーマなど何もなかった。
内側でどんどん先走りする衝動だけがあった。自分にとって「雑誌」とは
自分が興奮するページをどんどん作り、それが結果的に束になったものだったのだ。


上記、大竹さんの「雑誌」という言葉を「ブログ」という言葉に変換したものが、
自分にとっての『まだ寝ません。』ということになるのかもしれません。
脳みその眠っている部分を、必ずや活性化させてくれる刺激的な一冊であります。

※今週15日のDOMMUNEに、大竹伸朗さんが生出演されます。お見逃しなく!

大竹伸朗 / 見えない音、聴こえない絵

テーマ : art・芸術・美術
ジャンル : 学問・文化・芸術

焼却炉行きクンビアちゃん



コロンビア産の珍味クンビアを、電子音と一緒にヌカ漬けにしてみたところ、
ヴォーカルはヨレヨレと変調を来たし、発酵2ビートは一層に腑抜けてしまい、
こりゃあ、喰えたもんじゃねぇ、と已む無く廃棄した次第である。
すると、どういう訳か、場末の焼却炉にて奇跡の化学反応を起こし、
結果として、かつて誰も聴いたことがないような醸造トロピカル・サウンドが誕生した。

DICK EL DEMASIADO / SIN PUES NADA

テーマ : 音楽
ジャンル : 音楽

サマー・シンフォニー



強く照りつける午後の日差し。
木陰に置いた安物のスピーカーから流れる、美しい旋律。
駆け回るアスファルトの子供たち。交錯するのは、青い空。
優しい歌声と野良猫の戯れ。ろれるりラーガはインドの残照。
ずーーーっと聴き続けていたいんだ。僕たちのサマー・シンフォニー。

GAURI PATHARE / BANDISH, BEADS OF RAGAS

テーマ : 音楽
ジャンル : 音楽

人間風車



無精者の私が少しでも男前になれるようにと、日頃からお世話になっている美容室「passo a passo」。
こちらのヘアサロン。技術はもちろん素晴らしいのですが、「場」としての求心力も絶大なのです。
何よりも私は、店長さんの人柄に惹かれています。ご婦人たちをメロメロにするソフトな物腰。おまけに、
サブカルの申し子とでも言いたくなるほどに、アート全般に関しての圧倒的な知識をお持ちなのです。
カットに行く度に、それまで観た事も聴いた事も読んだ事もないような、映画や音楽や本を教えてもらいます。
そんな訳で、今回お借りしたのがこちらのDVD。後藤ひろひと氏の手掛けた演劇『人間風車』です。

売れない童話作家が初めてつかんだチャンス。
しかしそこには卑劣な罠が待ち受けていた。
どん底まで叩き落とされた作家の身に起こる戦慄の出来事とは?
おかしな爆笑童話の世界は、突如として想像を絶する恐怖のファンタジーへと変貌する!!

この恐るべき芝居を観た私の脳裏に、ある出来事が去来しました。
それは、9.11以降の米国で、一時的にジョン・レノンの「イマジン」が放送禁止になったということ。
世界最強の帝国が、たった3分程度の楽曲に恐れを為したという、紛れもない事実です。
「言葉」が促すであろう人々の「想像力」こそを、当局は何よりも恐れたのでしょう。
「想像力」が、如何なる大量破壊兵器よりも脅威になるということを、本質的に悟っていたのかも知れません。
しかし、もっと恐いのは「想像力」が完全に欠如した「人間」なのかも知れませんね。
いま、世界の到るところで、そのような「生き物」が狂風に晒されている気がするのは私だけでしょうか?

いや、『人間風車』を観て、背筋に冷たいものが伝ったという人は、恐らく私だけではないでしょう。

テーマ : art・芸術・美術
ジャンル : 学問・文化・芸術

東京BOHEMIAN



昨日は七夕。
オシメリ姫とヒキコモリ星が年に一度だけベッドを共にする日・・・だそうですね。
突然の記録的な集中豪雨は、きっとオシメリ姫の・・・。

それはさておき、今年もっとも楽しみにしていた作品が、七夕にリリースされました。
すでに聴かれた方もたくさんいらっしゃるかと思います。
以前、彼はある雑誌のインタヴューで以下のような発言をしていました。

子供時代、どこにも居場所がないって感覚を根底に持っていたけど、
鼻歌を作りはじめた時、それが自分にとって初めての拠り所になっちゃたんですね


また、いつか見たライブでは、何度も同じ台詞を口にしました。

音楽だけで、会話ができたら、良いのにな。

そんな彼だけれど、クリティカルな態度を、作品に反映させてしまうことも少なくありません。
それって実は、彼の理想とするところからは離れてしまうような気がしていました。
本来は音楽だけで会話ができる筈なのに、音楽以外のディレクションを添付してしまうから。
ライブではルー・リードや華原朋美のカバーを披露し、工場労働者の頭上を旋回したかと思えば、
ステージにジュリアナ東京を召喚してしまう彼ですから、きっと色んな面で制御が利かないのでしょう。

さて、そんな彼の2年振りの新作です。
今回はちゃーんと音楽だけで、会話を試みているじゃないですか。
赤ちゃんみたいに繊細な声が、「音」と「楽」の狭間を心地良さそうに往復しています。

ところで、旅人さん。僕との約束は覚えていらっしゃいますか?
優歌団「おそうじオバチャン」のコズミック・ヴァージョンを聴かせてくれるって話(笑)。

七尾旅人 / billion voices

テーマ : 音楽
ジャンル : 音楽

女の覚悟



間もなく映画が公開される『東京島』。
自分は桐野夏生さんのファンなので、一足先に原作で楽しませていただきました。

平凡な中年夫婦が海難事故に遭い、無人島に漂着する。
そこに23人の青年たちと11人の中国人も、同様に流れ着く。
夫はほどなく亡くなり、ヒロインである妻は、島でたったひとりの女であるが故に、
男たちにセックスを望まれ、次第に驚くべき変貌を遂げていく。

覚悟を決めた女の覚醒する様が、例によって、脅威の想像力で描かれている訳です。
さて、話は飛んでイスタンブールですよ、みなさま。
あのレコ・オヤジさんをして「才色兼備」と言わしめるほどの才女シェヴァル・サムもまた、
2年ぶりの新作に於いて、並々ならぬ決意を固めたようであります。

なんてったって、シェヴァル姉さん。
アラベスクの黎明期(70年代)に活躍したスター歌手たちの楽曲に、果敢に挑んでいますから。
とは言っても、J-POP界で流行しているような、自らのアイデア枯渇を隠蔽するための安直な
カヴァー集とは一線を画しています。これは勇敢な挑戦であると同時に、
水面下で進行する文化の欧米化に抗うための、一種のルーツ探索事業であるような気がします。

徹頭徹尾、骨の髄まで、何処を切っても、見事なまでにアラベスク=アラブ風。
煌びやかなストリングス。軽快なダルブッカ。噎び泣くウードとサズ。
純度100%のアコースティック・サウンドに滲む、女の粋。
最近の女性ボーカル物の中では、出色の完成度ではないでしょうか。

SEVVAL SAM / HAS ARABESK

テーマ : 音楽
ジャンル : 音楽

宿屋めぐり



全能の暴君である「主」の命を受けて、大権現に大刀を奉納する為に旅を続ける主人公。
ひょんなことから「嘘の世界」へと嵌まり込んだ主人公を次々と襲う、悪夢のような不条理。
先の見えない「宿屋めぐり」の果てに、彼を待ち受けていたものとは・・・・・・。

当代きってのパンク作家、町田康さんの変態的な話法は、ここにきて極に達しています。
そこまでやるか! ってくらいに日本語を踏み躙っていて、頭がクラクラします。
時代小説のようでいて、実は現代小説・・・のようでいて、本当のところはSF小説・・・なのかな?
とにかく時間軸は見事に拉げていて、空間にはいくつもの不穏なレイヤーが見え隠れします。
町田さんの筆は、そんな物語の中をのた打ち回りながら、普遍の真理を探求するのです。

辻褄の合わない無数の謎に隠された企みが露呈する瞬間、この小説は「何か」へと変貌を遂げます。
そのとき、恐らく皆様は天を仰いで嘆息されることでしょう。
極めて大胆、かつ、極めて面白い小説です。
河内十人斬りをモチーフにして描かれた『告白』と並ぶ、町田文学の金字塔。

町田 康 / 宿屋めぐり

テーマ : 小説
ジャンル : 小説・文学

カラクリ人間かく語りき



我、人形浄瑠璃見る。ゆえに我、人間なり・・・、とは、とても思えない。
それほど、浄瑠璃人形たちは強烈に人間臭かった。
真に、人間の魂を内包しているとしか思えなかった。

国立文楽劇場に勤める友人の粋な計らいにより、
『寿式三番曹/義経千本桜』を観劇させてもらったときのことである。

まずは冒頭の『寿式三番曹』が素晴らしかった。
古典芸能と聞くと、どうも敷居が高いと言うか、無意識に構えてしまいがち。
でも、そんなものは杞憂に過ぎなかった。友人曰く「これぞジャパニーズ・ボレロ」。
一糸乱れぬ三味線のミニマル合奏。モロッコのグナワやインドの古典音楽のように、
終盤にかけて超絶的な早弾きが一気に加速する。踊る人形も必死のパッチ。
それぞれ性格のようなものが滲み出ていて、とても面白い。
「彼ら」につられて観客の後頭部も、みな一様に揺れている。なんだか自然と涙が零れた。
となりを見たら、妻も同じ。白い歯を見せて、ボロボロ泣いてた。

そして、お待ちかねの大長編『義経千本桜』の幕開けである。
誰もが知っている平家と源氏を巡る、アノお話。
平家の将軍和盛が迎える壮絶/凄絶な終局に、穢れのない武士道、大和魂を見せつけられた。
売店のおっさんの素っ気ない態度ごときにクサクサしていた自分の、なんとちっぽけなことか!

人形を操るのは人間国宝をはじめとする素晴らしき技師たちであるが、人形たちの凛々しい
立ち振る舞いからは、すでに人間の手を離れて確立された、生命の気配が伝わってくる。
人間と人形の一進一退の攻防。境界線は次第に薄れていく。
その果てに、観客を魅了する芸の道が拓かれる。芸とは、つまり生きること。
死を臆さぬ侍たちの姿に、尋常でない血の脈動を感じたのだ。

四時間強の旅路のあと、薄汚い大阪の街を歩きながらも、自分の袖に手を絡めてくる存在から
目を背けることは、もはや出来ない。それは権威であり既成概念、或いは型にハマった欲望だ。

「解き放たれよ・・・」

「彼ら」は舞台上から、そう語りかけてきたではないか。
僕は妻の手をむんずと握り締め、猥雑なネオン街を一気に駆け抜けた。

テーマ : art・芸術・美術
ジャンル : 学問・文化・芸術

やりすぎタケシー

outrage.jpg

ぶち殺すぞテメェー! 
誰に口きいてんだコラァ!
なんだと、この馬鹿野郎! 
チンピラ・ヤクザが!


凄まじい怒号と、鬼の形相の連打。際限なき裏切りスパイラルと、悶絶拷問ショー。
怒号、怒号、顔面、顔面、銃声、銃声・・・それだけで二時間、存分に楽しめます。
これぞ正真正銘のバイオレンス・ムービー、って言うか、北野流の新感覚コメディーです。
めちゃくちゃ痛いのに、めちゃくちゃ笑える不思議な作品。
『その男、凶暴につき』『ソナチネ』などの奇跡的な傑作には及ばないものの、
これはこれで、僕はとても面白いと思います。とにかく顔面の連打にノックアウトされました。
やっぱり、ヤクザ屋さんは怖いっす。もはや性善説は絵空事なのでしょうか…?

北野 武 監督 / アウトレイジ

テーマ : 映画
ジャンル : 映画

Dear Mano Cesaire

malavoi2.jpg

親愛なるエマニュエル・セゼールさま

拝啓
僕はいま、1960年代にアナタが結成されたバンドの初期音源を聴いています。
僕が生まれるずーっと以前に、こんなにもステキな音楽が鳴っていたなんて!
アナタが率いる美しいストリングス・アンサンブルにうっとりと聴き惚れ、
躍動的なパーカッションやピアノの演奏に、心が弾みます。

そして昨年末、アナタのバンドの新しいアルバムが発表されましたね。ご存知ですか?
アナタもポロ・ロジーヌさんもいなくなっちゃいましたけど、アナタたちの精神は見事に
受け継がれているようです。信頼のリズム・セクションもバッチリですよ。
久しぶりに戻ってこられたラルフ・タマールさんも、包容力のある素晴らしい歌声を
聴かせてくれました。そんな作品を、今度こそリアルタイムで聴くことができた喜び。
それをどうしてもアナタに伝えたくて、一筆したためた次第であります。

だから、安心してください。
アナタはアナタのヴァイオリンで、天国の住人を癒してあげて下さいね。
マラヴォワは、カリブ海の、いいえ、世界の宝だと思っています。
                                              敬具                     

MALAVOI / MANO ET LA FORMATION
MALAVOI & RALPH THAMAR / PEP LA

テーマ : 音楽
ジャンル : 音楽

プロフィール

繁盛亭アルバイテン

Author:繁盛亭アルバイテン
ヒッピー・ボヘミアンな生活に憧憬を抱く浪速のポンコツ。
物心ついたときから寝つきが悪い。

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