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同じ阿呆なら…



  ハアラ エライヤッチャ エライヤッチャ
  ヨイ ヨイ ヨイ ヨイ
  
  阿波の殿様 蜂須賀さまが
  今に残せし 阿波踊り
  笹山通れば 笹ばかり
  猪 豆喰て ホウイ ホイ ホイ
  笛や太鼓の よしこのばやし
  踊りつきせぬ 阿波の夜
  踊る阿呆に見る阿呆 同じ阿呆なら
  踊らにゃソン・ソン

ってことで、キューバの歴史あるソン楽団、セプテート・アバネーロの結成90周年記念作です。
豊潤極まりない歌と演奏のオンパレード。これ聴いて踊りださなきゃ、夏は始まらないでしょう!
音質も最高で、すべてが素晴らしいの一言に尽きます。うん、音楽はこうでなくっちゃ!

SEPTETO HABANERO / 90 ANOS
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テーマ : 音楽
ジャンル : 音楽

焼け野原から始める

villalobos2.jpg

9.11以降、世界のあらゆる場所に花束が手向けられてきました。
世界警察としての米国の威厳はことごとく失墜し、多くの人々が現実から目を背け、
各自のアバターに意義を見出してきたように思います。それは終わりの始まりを予感させます。

そんな焼け野原状態の荒野に、突如ゆらゆらと立ち現れたヒプノティックな音響。
硬質なミニマル・ビートに、幻聴を想わせるハイ・ハットの波状が重なる。
自己増殖する残響が、37分かけて、じわじわと全体像を歪めていく。
上空を掠める屁のようなファンファーレは、まるで戦死者の遺骨で奏でるレクイエム。
それが、リカルド・ヴィラロボスの『Fizheuer Zieheuer』です。
過酷極まる激戦の末に辿りついたぬるま湯の境地・・・とでも表現しましょうか。
祝祭感と悲哀が綯い交ぜになった音像は、あらゆる音楽の成れの果てなのかも知れません。
時代と添い寝するサウンドという意味で、僕的にはコレこそが00年代を象徴する一枚なのです。

そして、自作曲15曲をノンストップでミックスした『fabric36』。
パーカッシヴな音の粒子と各種ボイス・サンプルを散りばめ、煌やかにスタートしつつも、
中盤に訪れる和太鼓の乱れ打ちによって、すべてが脆くも瓦解する。しかし・・・
暫しの間を置いてビートが回帰したとき、我々はふたつのあることを同時に思い知らされる。
ひとつは、音が止んでいる間もグルーヴは絶えず流れていたという、喜び。
もうひとつは、未だ戦争は終わっていないのだという悪夢のような、現実。
不敵なディアスポラは、こうして人々に呼びかけるのです。
自問自答せよ、と。

Villalobos / Fizheuer Zieheuer
RICARDO VILLALOBOS / fabric36

テーマ : 音楽
ジャンル : 音楽

蘇る、鉄男最強伝説

tetuo2.jpg tetuo1.jpg

ギュオゴッゴゴゴゴオオオオオゴゴオオオオオゴゴギュギギギギギギギギギュユゴゴゴゴゴ!!
凄い! 凄い! 凄い! 凄い! 凄い! 凄い! 凄い! 凄い! 凄い! 凄い! 凄い! 凄い! 凄い! 凄すぎる!!

あんなものを体験したあとに、冷静にレヴューなんてできる訳がない。
『鉄男』は観る映画ではない。体感する映画なのだ。
そもそも『鉄男』シリーズは、思春期の僕に、色んな意味で吐き気を催させてくれた映画である。
それが20年の時を経て『鉄男 THE BULLET MAN』として蘇った。最新・最高・最強の装いで!!

過剰に強調された白と黒のコントラスト。凄まじいスピード感。
石川忠の叩き出すメタル・パーカション。降り注ぐノイズの粒子。
それらが渾然一体となって、僕たち観客に襲いかかってくる。
至近距離で弾丸を撃ちこまれているかのような錯覚と衝撃。
塚本監督必殺のカット割りに、こちらの視覚が追いつかない。なんちゅうカメラ・ワークや!
映画体感中、全身に鳥肌が立ちっぱなし。ラストの空中戦には畏怖の念すら抱いた。
この映画こそが、いや、こんなものを創り出した塚本晋也監督こそが化け物だ。
そうだ、そうに違いない。彼こそが、鉄男なのだ!

活動休止中のナイン・インチ・ネイルズが手がけたエンディング・テーマが流れるまでの71分。
驚愕・脅威のインダストリアル・トランス・ワールドに、完膚なきまで打ちのめされよう。
何度も言う。『鉄男 THE BULLET MAN』は最強の体験型バイオレンス・ムービーである。
全身の筋肉痛を覚悟のうえ、是非とも劇場へ!

塚本晋也監督 / 鉄男 THE BULLET MAN

テーマ : 映画
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拝啓、ギリシャ殿



豊潤な歌と演奏で蘇る、いにしえのレンベーティカ&ライカ。
アテネ・コンサート・ホールに転写される歴史の面影。
世界最高峰の歌唱が、ギリシャ人としてのルーツを明確にする。
勇猛な主を、ブズーキを筆頭にした硬派な楽器群が見事に焚きつける。
ステージに花を添えるのは、美しい女性歌手たち。
時間の流れとともに、強靭なコブシ回しは迫力を増していく。
行き着く先は、観客を巻き込んでの大団円。
練りに練られた構成といい、まさにファンタスティック。
それ以外に、言葉が見つからない。

レンベーティカが産声を上げた時代と同様、
政治・経済面でのデッド・エンドを迎えつつある現在のギリシャ。
ふたたび音楽とともに蘇ってくることを、願わずにはいられない。
立ち上がれ、ギリシャ!

GEORGE DALARAS / SAN TRAGOUDI MAGEMENO

テーマ : 音楽
ジャンル : 音楽

恋する惑星



現在の東京を代表するSSWと言えば、曽我部恵一さん。
彼の傑作アルバム『ラブシティ』の中に「3つの部屋」という最高にメロウな楽曲が収録されています。
新入荷のチェックをする為にレコード屋に行った「ぼく」が、隣に居合わせた女の子に恋をするといった内容。
本当に胸がキュンとなるステキな一曲で、これを聴く為だけに『ラブシティ』を購入しても損はありません。

レコード屋で棚をチェックしてる女性って、何故だかわかんないですけど、惹かれるものがありますよねぇ。
本人の意志でディグしている人もいれば、彼氏の付き添いなのか、暇を持て余すように流している人もいる。
いずれにしても、そこに彼女たちがいることで、店内の埃っぽい空間に爽やかな風が運ばれてくる気がします。
血眼でエサ箱に齧りついている野郎どもは、むさ苦しいったらありゃしないですから(自分も含めて)。

だから僕は、妻と一緒にレコード屋に行くのが好きなんです。
彼女なりの感性でブツを掘り当て、試聴し、店主と言葉を交わしている姿に、毎度のことながらグッときます。
いつだったか、数枚のレコードを手にした妻の姿が、店内レジ・カウンターの内側にあるなんてこともありました。
もちろん店員さんには注意されていましたが、本人曰く「だって、そこにターン・テーブルがあったから」とのこと。
さすがは、妻。僕のような訳の分からん人間と結婚してくれるだけのことはあります(笑)。

で、こちらのWaheedaさんの赤ジャケ盤は、先日プランテーションに行った際に妻が購入した一枚であります。
妻の意志でこちらを手に取り、丸橋店長に試聴を申し入れておりました。
もちろん丸橋店長は、いつものように親切丁寧な解説を交えながら、妻の意を汲んでくれていましたよ。
そんなふたりのやりとりを、背後から「ふんふん」言いながら満足気に眺める僕。まぁ、変態ですわね(笑)。

妻から又聞きした話によると、
Waheedaさんは、ナシッドと呼ばれるイスラムの教えを歌うマレーシアの人気歌手だそうです。
言語はマレー語とアラビア語の両刀使いで、驚くべきはバッキング・アレンジの多彩さでしょう。
何かとビキビキのシンセや、ギンギンの四つ打ちを導入してしまう現在のアラブ・ポップス勢よりも、
遥かにクオリティの高いサウンドを楽しませてくれます。フラメンコ風、インド風など非常にバラエティ豊か。
購入した妻も、ご満悦の様子でした。丸橋店長、いつもありがとうございます。

ちなみに、この日の僕の最大の収穫は、
友達が『まだ寝ません』のことを凄く面白いと感心していたよ。確かにあんなのは、なかなか書けないよ」
と丸橋店長から仰っていただけたこと。嬉しいなぁ。日頃から妄想はしておくものですねぇ(笑)。

Waheeda / melodi

テーマ : 音楽
ジャンル : 音楽

散々・悲惨・ジーザス・サン



周囲から「ド阿呆(ファックヘッド)」と呼ばれている男を軸にした連作短編集。
自分が言うのも何ですが、これは相当に酷いお話です。
ここまで酷いと、逆に賛辞を送りたくなるってものですよ。

ファックヘッドを筆頭に、登場する全ての人物が自堕落で、腑抜けで、おまけにジャンキー。
馴れ初め、馴れ合い、成り行きまかせの狼藉三昧。読書中に何度も「ダメだ、こりゃ」と呟いてしまいました。
要するに、どうしようもない人間の、どうしようもない日常を、ただ「忠実」に描いているんですね。
そう、愚直なまでに忠実に。ありがちなヒロイズムもなければ、社会に対するアンチテーゼもありません。
そういう意味では、読者に対して遠慮の欠片もない表現の連続ですが、そこがすごく新鮮で、面白い!
誰もがチャールズ・ブコウスキーやレイモンド・カーヴァーの描く登場人物のようには、生きられませんから。

強者に媚びへつらい、弱者からは奪い、酒やドラッグに溺れ、保身の為ならば友人さえも見殺しにする。
上昇志向は微塵も無く、かと言ってアウトローを気取るほどの貫禄も余裕もありません。
嘆かわしいことに、人間や実社会よりも、神や精神世界に依拠している様子です。
だからこその、ジーザス・サン。ダメだ、こりゃ(笑)。

取り分け、堕胎手術を終えた恋人に「気分はどうだい? 何つっ込まれた? なあに?」と執拗に追求する
「ダーティ・ウェディング」は低俗の極みというか、愚の骨頂でしょう。まさにファックヘッド。
ヒッチハイクした車が大惨事を引き起こす「ヒッチハイク中の事故」から、とある主婦の入浴を覗き見する
「ベヴァリー・ホーム」までの11篇、ありとあらゆる品性下劣な行いを堪能することができます。

このように、ただあるがままの現実を、あるがままに描いていく訳ですが、時折ハッと息を呑むほどに美しい
描写に遭遇します。それは読者にとっては非現実的であっても、著者デニス・ジョンソンや主人公ファックヘッド
には紛れもない現実なんですよね。その描写力、説得力は大天才ボルヘスに勝るとも劣りません。
本当の意味でひらかれた表現というものが、ここにはあります。

まぁ、どうしようもない話ばかりなんですが、ある種の再生の物語として楽しむことも可能ですし、
ジャンキーたちの振る舞いからも、何がしかの収穫を得られる稀有な一冊であることは間違いありません。

デニス・ジョンソン / ジーザス・サン

テーマ : 小説
ジャンル : 小説・文学

バリスター部長と秘密の残業



日々の仕事に追われ、ストレスが溜まる一方のOLさんたち。
彼女たちの悶々とした気持ちを解消してくれるのが、トーキングドラム推進部のバリスター部長である。

業務終了後、悦楽的なサービス残業を求めて推進部の扉を叩く者が、後を絶たない。
各自の恍惚の表情は、回転椅子に深く腰掛けたバリスター部長へと注がれる。
すでに意を受けている部長は、手にしたトーキングドラムを撫で回しながら、こう言った。
「こいつが欲しいんだろ?」

そして、不意に鼓を打つ。ストトトトン。
たちまち漆黒のポリリズムが室内を満たす。それはナイジェリアの奥地へと誘う猥雑なリズムだ。
呼応するようにして、OLさんたちの核心が潤い始めた。押し殺した喘ぎ声。嗚呼っ。
立っているのも儘ならないといった部下に対して、容赦なくアーシーな咆哮を浴びせかける部長。

OLさんたちは底なしの快楽に慄然として、震える。
しかし、いつもと何か様子が違う。部長の動きが、あまりにも慌しいのだ。
かつてはネットリと焦らすようなプレイを最大の武器としたバリスター部長であるが、今日はすべてが速い。
そんなOLさんたちの不安を余所に、バリスター部長は更なる加速を試みる。おおおおおおおおおお。

不信感を抱きながらも、強引に迫りくる部長を前に、次々と果ててゆく女性たち。
資料が山積みになったデスクにくずおれていた企画部の派遣社員が、やっとのことで顔を上げた。
額に滲んだ汗。紅潮する頬。乱れた前髪。女性は力なく懇願する。その声は危ういまでに、きれぎれである。
「部長。高速化されるのも結構ですが、私は以前のようにじっくりと攻められとうございます」

すると、バリスター部長はゆっくりと腰を上げ、当の派遣社員の眼前に立ちはだかった。
女性の視線の先には、黒光りしたバリスター棒が屹立している。OLさんたちは一様に息を呑んだ。
「どんな人間にも成功の機会が与えられるべきなのだ。そんなことより、その上品な口で・・・」

SIKIRU AYINDE BARRISTER / IMAGE & GRATITUDE

テーマ : 音楽
ジャンル : 音楽

アシッド・ヒルビリーの誘惑



インド洋にポツーンと浮かぶレユニオン島から届けられた、まどろみのサイケデリア。
泥臭いマロヤ・リズム(8分の6拍子)の上で、心地良さ気にたゆたうアラン・ペテルの歌声。
まるで、春先の蝶々のように僕たちの掌をすり抜けていく。なんて掴み所のない音楽なんでしょう。

微妙にずれた音程が、ありきたりな着地点を拒み続けるのです。
それはインド洋の上空に浮かんだ天然の発光体であり、波間に漂うエモーション。
もしくは、かつてフランス領の流刑地だったレユニオン島における徒花とも言えます。
1995年。彼、アラン・ペテルはアルコール中毒の末に没しているようです。

兎にも角にも、彼の萎びた歌声は、禍々しい時代の坑鬱薬になるでしょう。
レコ・オヤジさん仰るところの「アシッド・フォーク・マロヤ」とは、まさに言い得て妙。
アニマル・コレクティブ好きやデヴェンドラ・バーンハート好きは言うに及ばず、
アーサー・ラッセルやエドゥアルド・マテオのマニアの方なんかも、きっとお気に召される筈です。

僕はもう完璧にやられています。
年間ベスト(リイシュー部門)入り確実の一枚です。
購入はもちろんエルスール・レコーズにて、よろしく、どうぞ。

ALAIN PETERS / PARABOLER

テーマ : 音楽
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路上に滴る音楽



網膜、鼓膜をすり抜けていく国家公務員の汚職。家族に殺意を抱く引きこもり。薄っぺらい携帯電話。
無駄な資料請求。高額の架空請求。女子高生のナマ足。撒き散らされた夢や希望の残骸。大量の精液。
路上に吐き捨てられた唾液。萎びたシケモク。リヤカーを引くホームレス。交錯する怒声。血の臭い。
煌びやかなブランドショップ。火を放つ中年。衝動的な若者。胡散臭い公共事業。ギャルたちの嬌声。
強制労働。賃金未払い。横領。信号無視もできない大人。年収1000万も夢じゃない。罅割れたビール瓶。
かち割るイランの頭。忍び寄る他国。腐敗する愛国。足跡だらけの朝刊。行き場のない被害届け。偽り。
街中を侵食する誇大広告。スプレー缶を片手に佇む絵師。拡声器。アジテーション。無産階級。浮き足立つ。
集団的偽装工作。繁華街の吐瀉物。アル中。ポン引き。売女。引き千切られた紙幣。女子割礼。無気力。
湾岸に遺棄された右足。腐乱した頭部。甘いバースデーケーキ。合コン。合成樹脂の臭い。ハードコア。唖然。
ガード下の献花台。虚ろな眼差し。明日があるさ。性器に移植された避妊具。滅私奉公。牛丼戦争。拉致。
早漏のAV男優。AV女優は女子大生。テキーラ。盗撮中の惨事。逃走中の賛辞。無垢な交通誘導員。電飾。
人気タレントの失墜。ストリップ。報道記者の無礼講。ノイズ。8階建ての楽園。偽らざる記憶。ローライダー。
ジャンクフードに群がるOL。解体作業員。アナタの夢を叶えます。ニートのロマンス。秋葉原の解放区。
回転するレコード。針。ワンボックスカーの女。路上のSSW。掻き消された歌声。未来は俺らの手の中。
譫妄快挙。選挙区離脱。打ち捨てられた小動物。真新しいスニーカー。無料引換券と引き換えの命。暴露。
キャリア・アップ。惨憺たる上昇志向。企業買収。先生ありがとう。祝辞と祝杯。舐める辛酸。悪影響。
親殺しのバットで甲子園出場。チロルチョコの陰謀。パチンコ屋の赤ん坊。あらゆる施設に痴呆老人。不始末。
燻る破壊衝動。暴力。ジョンとヨーコ。極左防衛主義。エレクトロ。雑踏の明るみ。新宿拡声器集団。ライム。
役人からの堕胎勧告命令。1945年の約束。フラワー・ムーブメント。忘却の彼方。ファンシーなキャラクター。
工場地帯に長蛇の列。奪われた配線。配管工の恋。淡い恋情。免れぬ殺意。KKKの残響。歪曲した反戦歌。

スピーカーから聴こえる。

DJ BAKU / SPIN HEDDZ

テーマ : 音楽
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今宵、ネクスト・レベルの丘で



メディア・レイピスト宇川直宏さんがプロデュースするライブストリーミング番組「DOMMUNE」。
プログラムはトークショーとDJタイムとの二部構成で、金・土以外は毎日配信。
「平日から祭りで何が悪い」という宇川さんの頼もしい言葉(哲学)にグッときます。
「DOMMUNE」という名前の由来がまた面白くて、宇川さん曰く「COMMUNEのNEXTを表す造語」とのこと。
要するに「Cの次の次元であるDでDOMMUNE」だそうです(詳細はTV Brosの最新号を参照)。

さて、話は飛んでホーチミンです。
ライブ・ストリーミングによって映像メディアの新時代が到来したように、ベトナムの民歌も、いよいよ
NEXTを見据え始めたようです。それがアイ・ヴァンの08年作『DEM A DAO』です。

伝統に重きを置きつつも、単なる回顧趣味に終わっていません。
これは新しいポップの幕開けに相応しい作品で、同郷の者たちに大いなる指針を与えたのではないでしょうか?

なんと言っても白眉は5曲目。
たおやかな民歌で始まりつつも、突如グラウンド・ビートに転調、更に茶目っ気たっぷりのベトナム語ラップが
宙を舞ったかと思うと、ふたたび優雅な民歌に回帰していくという、驚きの展開です。
かと言って、しっちゃかめっちゃかに前衛を試みている訳でもなく、通底するのはベトナムの優雅な旋律です。
安易に流行を取り入れてみました、という感じでないことだけは、しっかりと明言しておきます。

もう一点、特筆すべきはアイ・ヴァンの素晴らしい歌唱。
様々なアレンジの楽曲に臆することなく、ベトナムらしい伸びやかな歌声を聴かせてくれます。
さり気なく滲ませる妖艶さと、感傷の雫が、心の琴線に触れます。
計り知れないポテンシャルを秘めた充実作ですね。

AI VAN / DEM A DAO

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ひとりでも通話



「自分という人間に最後まで付き添うことができるのは、自分ひとりだけ」
先生は僕たちに向かって、確かにそう言った。

『通話』。それはチリの詩人・小説家であるロベルト・ボラーニョが描く人生の悲喜交々。
人間と言うキャンバスに切り貼りされる愛や憎悪、出会い、別れ。
交錯する記憶と、心情の羅列。もしくは、その断片。

通話(対話)とは、相手(他者)があってこそ成立する個々人の営み・・・だとは限らない。
何故なら、その他者こそが、自分の本質である可能性を否定できないから。
不確定な自己、あるいは他者。そういうものを引きずりながら、みんな生きている。

通話=内面に語りかける心のシグナル。シグナルはキャンバスを赤く照らす。
人生はまるでコラージュのようだ。
ロベルト・ボラーニョの詩的な言葉に触れて、そんなことを思った。
常に何かが貼られ、何かが剥がされ、その記憶は薄らいでも、痕跡だけは確実に残る。
傷跡のない生き物なんて存在しない。人生も同じ。

つかみどころのない人生を、それでも必死につかもうと、もがく人々。
それを誰も否定することはできない。きっとアナタもそう、僕だって一緒。

チリの詩人による儚く、そして、美しい独白に耳を傾けよう。
「僕らはこうしてここにいる。そしてこれから先、いろいろな事が、微かにではあるが変わろうとしている」

*コラージュと言えば、こちらも要チェック→ギャラリイ5603

ロベルト・ボラーニョ / 通話

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ジャンル : 小説・文学

ノルウェーの森



ノルウェーのベテラン音楽家、ビョーン・トシュケさん。
一言、チルアウトに最適な音楽です。
中身はハウスとダブのブレンド。あるいはフォークとディスコの邂逅。
特に新しいことや前衛的なことをやっている訳ではないですが、この心地良さは特筆に値します。

ゲーム少年が、ひょんなことからダブと出会い、
その魅力にズブズブとハマっていく過程が詳細に記録されています。
ジョイントを手にクラブに行きつつも、未だゲームに後ろ髪を引かれているというか。
結局は辛抱できずに、ダンスフロアの片隅でポータブル・ゲームに興ずるというか。
その成果は3曲目の「SPELUNKER」に如実に現れています。
なんて愛らしいトリップ・ミュージックなんでしょう!

全編に於いて、現在のクラブ・ミュージックのトレンドとは一線を画する、独自の視点が貫かれています。
アイデアは大胆ですが、その手つきは極めて繊細。バランス感覚も抜群ですよ。
霧の立ち込めるノルウェーの森に降り注ぐ、美しいメロディ。内省を突き抜けて外界に表出する白昼夢。
鬱蒼と生い茂る木立の陰から、無垢な少年が、こちらを見てほくそ笑んでいるかのよう・・・。
愛らしくも恐ろしい、北欧モダン・フォークの傑作です。

BJORN TORSKE / FEIL KNAPP

テーマ : 音楽
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アイツには負けたくない



ライバル。
時には非常なまで傷つけ合い、時には互いに切磋琢磨する。言うなれば、唯一無二のソウルメイト。
宮本武蔵と佐々木小次郎。渋川晴海と関孝和。王と長島。猪木と馬場。チョコボール向井と加藤鷹。
そして、ハイチにおける大衆音楽の父、ヌムール・ジャン=バティストにもライバルが存在した。
それが、アルト・サックス奏者のウェベール・シコーである。

警告:ここからは一部、妄想表現が含まれます。ご注意下さい。

ヌムールが楽団を結成すれば、ウェベールも右に倣い、
ヌムールがサックスを吹き鳴らせば、ウェベールも右に倣い、
ヌムールが「これがコンパだ」と言えば、ウェベールは「これがカダンス・ランパだ」と言い、
コンパニー(男女交遊会)では、両者とも競い合うようにして酒を呷り、美談をひけらかし、
好みの女性を力ずくで奪い合う・・・といったことを永遠と繰り返すことで、ハイチ音楽を豊潤なものにしてきた。
1960年代の出来事。なんと健全な競争意識であろうか!

とびっきり陽気な音楽を創出する両者の争いを、ハイチの人々は温かい目で見守っていたに違いない。
力強いサックスのリフ、まろやかなアコーディオンの音色。躍動感あふれるパーカッション。
そんな煌びやかな音の隙間から、ふたりの偉大な音楽家たちの微笑ましい小競り合いが垣間見える。

SUPER ENSEMBLE WEBERT SICOT / CADANCE RAMPA - HAITI

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Bone Cat Books #1



世界一ちいさな出版レーベル、でも世界一アットホームな出版レーベル。
それが、僕と妻とのBone Cat Books。いまのところ、ラインナップはたったの二冊。
第一弾リリースが僕の『ARIWA』。
第二弾リリースがエルモ君の『BLOOD ON THE MASK』。

その『ARIWA』の感想を、questaoさんが『パンゲア食堂繁盛記』にアップして下さいました。
あまりにステキなレヴューなので、questaoさんの言葉だけでも、皆様に読んでもらいたいです。
本末転倒ですが、よろしく、どうぞ。

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アナーキー・イン・ザ・SM



近所のスーパー・マーケットに行くと、妙な光景に遭遇した。
店内通路のど真ん中に、買い物カゴが置かれているのである。なに食わぬ顔で、デーンと。
カッパドキアのキノコ岩や屋久島の屋久杉のように、何千年も前からそこに鎮座しているかのようだ。
有無を言わせぬ存在感を放つカゴは、周囲の買い物客を、これでもかと言わんばかりに威嚇していた。

誰もそれをどけようとしないどころか、近づこうともしない。
自分と同じようにたまたまカゴと対面した客は、慌てて踵を返し、別ルートへの迂回を余儀なくされていた。
あれは何なのか? スーパーの守り神なのかしらん? お賽銭、いる?

陳列棚の陰からしばらく観察を続けていると、チョカチョカとカゴに近づく、ひとりの老婆の姿があった。
カゴに挑もうかという、頼もしい人物の登場なのだろうか。淡い期待を抱いたが、なにやら様子が違った。
何と老婆は手にした白菜やエリンギといった野菜を、次々と当のカゴに投げ入れていくではないか。
一切の躊躇もなく、である。恐らく良心の呵責さえ感じてはいないだろう。

ひと通り手の中の品物を入れ終えた老婆は、何事もなかったかのように、カゴの前から姿を消した。
しかし、それで終わりではなかった。数分後には、パンやヨーグルトを両腕いっぱいに抱えての再登場である。
そして、先程と同様に、ドサドサとカゴの中に投げ入れ始めた。私は言葉を失った。

得体の知れないカゴの正体は、ババアの活動拠点だったのだ。
カゴが此処にあることで、ババアは手ぶらで買い物を楽しむことができる。
しかも此処は、どの売り場への遠征も有効な、スーパーの中心地点なのだ。
それは米国にとっての普天間のように、極めて都合の良い基地であるに違いない。

唖然としてその場に立ち尽くす私であったが、次の瞬間、カゴから顔を上げた老婆と視線が重なった。
鋭いまなざしに射すくめられる私。一歩も動けない私。すると老婆がたった一言こう呟いた。
「あかんか?」
私は、静かに首を横に振ることしかできない。口中の唾液が苦かった。
くるりと背を向けて、ふたたび戦線へと旅立つ老婆。その背中にプリントされていた「DESTROY」の文字。
すっかり丸くなった背中。よれよれのTシャツ。そこに燦然と輝く赤字の「DESTROY」である。
破壊の季節がやってくる。ひしひしと実感した。間違いない。破壊の季節はやってくるのだよ。

たちまちパンキッシュな気分になった私は、店員からの「レジ袋はご利用ですか?」との問いに対して
「ノー・フューチャー」と答え、慌しく帰路に着いた。
帰宅してもパンキッシュな昂揚は一向に鎮まらず、夢中になってパンク音楽を求めた。

そして棚の奥底から引っ張り出したのが、日本のハードコアの極北とも言えるコンピレーション・アルバムである。
これだ、これだ、これを求めていたのだ。私は早速、BOSEのサウンドウェーヴ・システムにCDを放り込んだ。

日本最狂のクラストコア・バンド、アブラハム・クロスのヘヴィなグルーヴが、スピーカーから放出される。
爆裂するノイズの衝撃波が、矢継ぎ早に襲い掛かってくる。私は意識するともなく、拳を天高く突き上げた。
六畳間でのロンリー・モッシュ地獄は、妻が帰宅するまでの間、永遠と繰り返されたのであった。

V.A / TERRO-RHYTHM#2

テーマ : 音楽
ジャンル : 音楽

妄撮・トルコ風呂



繁盛亭の視線の先に、装飾灯のアーチがあった。トルコ風呂だった。
中に足を踏み入れると、ギュル・オズカンという名の湯女が出迎えてくれた。
内側から扉を閉めるなり、湯女ギュル・オズカンは白いうわっぱりを脱いだ。
腹から上には乳かくしをしているだけだった。

その湯女がテーラード・ジャケットのボタンを外してくれるので、繁盛亭はふと身を引きかけたが、
任せていると、足元にひざまずいて、靴下まで脱がせてくれた。
繁盛亭は香水風呂に入った。タイルの色のせいで、湯はみどりに見えた。
香水の匂いはあまりよくないのだが、ゲットーの安宿から安宿へと隠れ歩いてきた繁盛亭には、
とにかく花のかおりだった。

香水風呂を出ると、湯女が身体をすっかり洗ってくれた。
足元にしゃがんで、足の指の間まで、娘の手で洗ってくれた。
繁盛亭は湯女の頭を見下ろしていた。昔の洗い髪のように後ろへ垂れて、妖艶であった。

「お股をお洗い致しましょうか?」
「ええ? お股まで洗ってくれるの?」
「どうぞ・・・。お洗い致しますわ」

そう言えば、ずいぶん股間を洗わなかったから臭いのだろうと、繁盛亭はふと脅えたが、
石鹸の泡で急所を揉まれているうちに気後れはなくなって、思わず次のような言葉をかけてしまう。

「あんたの声は、実に良い声だね」
「声・・・・・・?」
「哀愁がこもっていて、愛情がこもっていて、それで明るくきれいだね。あんた恋愛してるの?」
「恥ずかしくて、ものが言えなくなりますわ」

繁盛亭は涙ぐみそうになっていた。ギュル・オズカンの声に、清らかな幸福と温い救済を感じていた。
永遠の女性の声か、慈悲の母の声なのだろうか。

*当記事は川端康成の『みずうみ』を下敷きにしています。川端先生、ギュルさん、本当にごめんなさい。

GUL OZKAN / HAYAL

テーマ : 音楽
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言葉で見る砂漠



フランスによる植民地化の波のなかで、抵抗しつつも滅亡の道をたどるサハラの民の物語と、
その末裔である現代の少女ララの遍歴を合わせ、神話的世界を作りあげた傑作。

これは血の物語だ。人物の固有性を証明する血。民族に受け継がれる血。抗争によって流される血。
大地と血。叡智と血。恥辱と血。これは圧倒的な血の物語なのだ。

極めて密度の高い文章が、読者の脳裏に映像を喚起させる。
音が聴こえる。祈りが聴こえる。そして、驚くべきことに臭いがする。
我々が戦争を追体験できないことの要因に「臭い」がある。そうではなかったか?

ル・クレジオはあらゆる情景を、すべて自身の言葉に置き換える。繊細で純度の高い言葉に。
それは、我が国の至宝である安土桃山の絵師・長谷川等伯とは間逆の世界観。
言葉によって見るという哲学、その行為の敬虔な殉教者の如し。
血の通った表現、言葉。やはり、ここでも血だ。血の連鎖が生む、紛れもない芸術。

砂漠と都会。アフリカとフランス。そこに優劣などある筈はない。あるのは決定的な差異である。
そんなあたりまえのことを、本書を読んで改めて痛感した。言葉によって知ったのだ。
実はすべての人種が遊牧民なのかも知れない。魂のノマド。行き着く先など知る由もなく、生きている。

勇断することの美しさと危険性。穢れなき者の、穢れ。
二律背反するものが自分の頭の中をぐるぐる駆け巡り、砂塵を巻き上げた。答えなど、知る由もなく。
最後は誰もが沈黙に包まれるだろう。沈黙、それは我々に等しく与えられた泉のようなもの。
マグレブ音楽にある種の憧憬を抱いてしまう自分にとっては、避けては通れない物語だった。

ジャン=マリ・ギュスターヴ・ル・クレジオ / 砂漠

テーマ : 小説
ジャンル : 小説・文学

行間に降り積もる雪



「今日のデートどこに行く?」「どこでも良いよ」「じゃあ、一緒に考えよう」
と友好的に、ことが運ぶ場合もあれば、
「今日の晩御飯、なに食べたい?」「なんでも良いよ」「じゃあ、てめぇの脳みそでも食らってな」
と命の危機に瀕することもある。世界万人に共通のルールなんて、本当は存在しないんですよね。
優柔不断というだけで、命の危機を感じなければならないことも、あるっちゃー、あるそうです。
そのあたりを踏まえて、オルハン・パムクの『雪』です。

トルコ東部、アルメニアとの国境に近い町カルスを訪れた詩人のKa。
そこで彼は刹那的な恋愛と、イスラム原理主義者による血腥いクーデターに巻き込まれていく。
無神論者という曖昧な態度が、Kaを窮地に追い込んでいくのです。嗚呼、恐ろしや。

物語・物語内物語・物語外が重層的に絡み合う本書は、他者の言葉に耳を傾けることの重要性を問うている。
確かに、すべての諍いの発端は、コミュニケーション不全から齎されるのかもしれません。
政治的、思想的な問題提起は物語の重要なエレメントであるに違いありませんが、自分が何よりも圧倒
されたのは、タイトルにもなっている雪の描写です。未踏の地であるトルコの凍てつく寒さが否応なしに
伝わってきます。本を手にした指先が、かじかんでくると言っても過言ではありません。
猛烈な吹雪の向こうに思想や政治の全体像が翳んでゆく。イスラム原理主義の本質も、雪に埋もれてゆく。
すべてを覆い尽くす雪。雪。雪。その描写がやはり圧倒的に素晴らしいです。
払拭しがたい雪の存在が、ある意味、著者の白旗宣言。思想が生む軋轢の前では、ペンすら無力であるとの。

物語の終盤近くで、著者であるオルハン自身が登場し、以下のような言葉を残しています。
「あんたが話したことを、読者に信じてもらいたくない。遠くからでは、誰も、俺たちのことをわかりはしないのだ」
それでも、耳を傾けることは決して無駄ではありません。いや、耳を傾けることくらい「しか」できないのです。
トルコ音楽にある種の郷愁を覚えてしまう自分にとっては、避けては通れない物語でありました。

オルハン・パムク / 雪

テーマ : 小説
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コズミック・ホステス・ナンバー・ワン



私の義母は、あらゆるフレームから逸脱する魅力的な人である。
言うなれば、デッドボールをホームランにしてしまうような超人なのです。

「私は地球の常識には捉われないの。宇宙の論理で生きているから」
なんていう脅威のコズミック思想を開陳したかと思えば、
「おっぱいの形が崩れないように、おっぱいと同じ形のお餅を毎日食べるの」
なんていう根拠もへったくれもないような持論を、平然と言ってのけたりもする。
義母と話をしていると、ある種の活力というか、ユーモアの精神を取り戻せるのですよ。

そんな愛すべき義母の職業は、スナックのホステスさん。
彼女の浮世離れした感性が、ミラーボールの回転する夜の社交場を宇宙に変える。
しかし義母にも弱点はある。だって人間だもの。それは、歌。所謂オンチとは次元が違います。
彼女の歌唱もまた、地球の規則からは逸脱してしまう超音波のようなものなのです。
リーマン・ショック・ヘアーなジェントルからデュエットの誘いを受けるたびに、
気持ちがへなへなと萎縮してしまうのだそうです。
そのルックスは、インドネシアの歌姫イエット・ブスタミにそっくりなのに・・・。
『ZAPIN DUT』のCDを手にした妻が、思わず「お母さん?」と呟くほどに瓜二つなんですよ。

もしも、義母にイエットばりの歌唱力が備わっていたならば、その影響力は夜の大阪に留まっては
いなかったと思います(笑)。え? 音楽の話は、って? 今日は義母の奔放さに免じてご勘弁を。

IYETH BUSTAMI / ZAPIN DUT : LAKSMANA RAJA DI LAUT

テーマ : 音楽
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ブロウ化された思想



思想をブロウ化するラスタのサックス奏者と言えば、セドリック・ブルックス。
ラスタファリ・キャンプで鍛えあげられた思想を、自身の息吹に託します。
ブロウ一発、ラスタ・ファーーーーーーーーーーーーーーーーーーーライ!

そんな彼の『UNITED AFRICA』はラスタ・ジャズが半分、カリビアン・ジャズが半分という構成。
前者ではディープでグルーヴィな、後者では最高に心地良いトロピカルなブロウを聴かせてくれます。
レゲエ、カリプソ、ジャズ、ファンク、ナイヤビンギの要素が溶け込んだジャマイカン・フュージョンです。
ラスタに傾倒する前は、ソニー・ロリンズやサン・ラに触発されたというのも納得の仕上がりですね。

自分ももちろんそうですが、ラスタ思想に特別な思い入れのない日本人が聴いても、
単に音のカッコ良さにノックアウトされますよ。アーネスト・ラングリンのギターが、また格別です。

Cedric 'Im'Brooks / UNITED AFRICA

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レコード錬金術の行方

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ジェイムズ少年は、時間を忘れて黒い円盤に見惚れていた。
回転するレコード。溝に刻まれているのは、往年のソウル・ミュージック。
針が盤を撫でる際に生ずるノイズまでもが、ジェイムズ少年には心地良い。
彼は両親のレコード棚からとっかえひっかえ円盤を持ち出しては、プレーヤーに乗せる。

ある日の朝食時、ジェイムズ少年は食パンを頬張りながら、両親に告げる。
「いつか、パパやママのレコードに魔法をかけてあげるね」
両親は顔を見合わせて、穏やかな笑みを浮かべた。

やがて、ジェイムズ少年は数え切れないほどのレコードを小脇に抱えて、部屋に閉じこもる。
もちろん、レコードに魔法をかけるためだ。盤面に堆積した埃を払い、少年は音楽と向き合った。
来る日も来る日もジェイムズ少年は部屋にこもっては、レコードに魔法をかけ続けた。

それから幾日かの時を経て、扉はゆっくりと開かれた。
少年から青年へと成長したジェイムズの手には、一枚のレコードが握られていた。
「パパ、ママ、できたよ」

頭髪に白いものが混じり始めた両親は、いつかと同じように顔を見合わせて、穏やかに微笑んだ。
レコードに針を置くジェイムズ。その表情はどこか得意気である。そして、音が鳴る。
完璧なまでにシンプルに響くリズムトラックには、確かに両親のレコードの面影があった。
しかし、同時にそれはまったく新しい音楽でもある。極めてソウルフルなブラック・ヒップホップだ。
彼は両親のお気に入りだった「Think Twice」や「Brazilliann Groove」などに魔法をかけたのである。

しかし希代の錬金術は、彼の身体に異変を齎し、そして蝕んだ。
2006年2月、ジェイムズ・ヤンシーは膠原病による合併症のため、32歳の若さで帰らぬ人となる。
それでも彼は最後までレコードに魔法をかけ続けた。その成果が、入院中の病室で産み落とされたという
『DONUTS』である。未だに世界は彼の残した大胆なループに耳を傾けている。
言うまでもなく、自分もそのひとりだ。

JAY DEE / Welcome 2 Detroit
JAY DEE / DONUTS

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六曲一双に歎ずる



己の出世のためなら手段を選ばぬ絵師。生粋の成り上がり系、長谷川等伯。
当時、画壇の最大流派として君臨していた狩野派に対して、無謀にも戦いを挑み続けた男。
等伯が得意としたのはサンプリング。つまり引用。ネタ元は中国の画僧から、宿敵・狩野派にまで及ぶ。
やがて等伯の引用の美学は極致に達する。そして遂には、狩野ブランドの牙城を突き崩すのである。
豊臣秀吉の子、鶴松の菩提を弔う障壁画の制作を手掛けるに至るのだ。最大の仇敵、狩野派を差し置いて。

そんな、きな臭いアナウンス、と言うか、刷り込みの所為もあって、自分は腹を括っていた。
何がって? もちろん決まっているじゃないか。時空を超えて絵師と刺し違える覚悟を、ですよ。

ところが、自分の思惑は予想を遥かに超えた角度から、裏切られる。
まず、開催地を間違えるという失態を晒すことによって、まんまと出鼻を挫かれることになる。
前売りチケットを購入し、詳細な地図が記載されたチラシをも手中に収めていたにも拘わらず、である。
早くも僕の頭の中には、等伯が創出した濃霧が立ち込めていたのだ。そうでなければ納得がいかない。

しかし、それは序章に過ぎなかった。数時間後の僕は、言葉が如何に無力であるかを思い知らされるのだから。
国宝『松林図屏風』と対峙したことによって、かつて言葉の力に依拠してきた自分の価値観が、脆くも崩壊した。
国宝だからだとかいう刷り込みはない。むしろ疑念すら抱いていた。あんなものカビみたいじゃねぇか、と。
だが、『松林図屏風』は凄かった。瞬時にして胸中が濃霧に覆われた。完全に立ちすくみ、ぐうの音もでなかった。
大袈裟だとか思う人がいたら、アレの前に立ってみるがいい。震えるに違いない。人によっては涙を流すだろう。

『松林図屏風』。アレを正確に言い表せる言葉なんて、実は最初から存在しないのではないか?
成り上がりの果てに、こんなにも静謐な世界を見つめた絵師がいた。それを知るだけで十分じゃないか。
究極的に言葉は無力だ。言葉に依拠することなく啓けるもの。そこに心情なるものは潜んでいるに違いない。
沈黙によって伝わることは実に多い。静寂は雄弁に物語るのだ。

販促コーナーで売られていた『松林図Tシャツ』と、帰りのタクシーの運転手が呟いた
「長谷川さんって、もう死んではんの?」という台詞には膝から崩れ落ちそうになったが、同時にそれらが
僕の意識をぎりぎり現実に繋ぎとめてくれた。ねぇ、お母ちゃん、そうだろ?
そして、ずっとアレのことを『少林寺屏風』と言っていた妻に、心の底から感謝した。

テーマ : art・芸術・美術
ジャンル : 学問・文化・芸術

橘美穂の世界



日頃から大変お世話になっている女流陶芸家・橘美穂さん。
我が家の食卓を華やかに彩ってくれる彼女のステキな器たち。
花器などのオブジェに漂う、いにしえのオリエンタリズム。
美しい陶器たちは、何気ない日常に不思議な風を運んできてくれる。

そんな橘美穂さんがホームページを開設されました。
彼女の掌から解き放たれる魅惑の世界をご堪能ください。

http://www.tachibanamiho.com/

テーマ : art・芸術・美術
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噎び泣くジクルと静謐の欠片



男がジクル(祈祷句)を唱え始めたとき、清らかな生命が胎動する。
一筋の焔のように絶えず揺らめく切なるシラブル。あるいは静謐の欠片。
男の喉に宿りし神のお告げ。その声は広漠たる大地の果てに反響する。
声は他者の心へ。他者はまた己の写し絵となる。それを知るがゆえに噎び泣く咽喉。
それは思想と直結した無比の音楽に昇華される。それは聴く者すべてを震えさせた。
それは! それは! それは!

やがて男の娘までもが口を開き、ジクルを唱える。
その声は力強い。暗闇に射す一条の光となり、聴衆の耳へと届けられた。
まるで精神の内側で高鳴る鐘のように、万人の鼓膜で息づくメリスマ。
恍惚の! 恍惚の! 恍惚の!

いつしか父娘の祈祷はひとつに交わり、そして、最果てまで突き進む。
神との交接を願って、高く打ち鳴らされる打楽器ダフ。
夜を抱擁するジクル。愛の。悲しみの。切実なる。
届け! 届け! 届け!
「真理をもたらすがゆえに、我らをお導きくださる神に栄えあれ・・・」

ALIM AND FARAGANA QASIMOV / SPIRITUAL MUSIC OF AZERBAIJAN

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エスコート・フロム・台湾



人生の大先輩から、台湾土産として頂戴した素敵な作品(Sさん、ありがとうございます)。
横倍プラケースに各種ポスターが付いた豪華版仕様に、心ウキウキ・ときめきトゥナイト。

垢抜けたジャケット・デザインからも窺い知れるように、ボニー・ピンクの隣に並んでいても
まったく違和感がないであろう上質なアジアン・ポップス作品となっています。
休日にカー・ステレオに放り込んで海岸沿いを疾走すれば、愛車も妻も、すっかりご満悦でしょう。
まぁ、免許も車も持っていないんですけれども。生涯、助手席で人力ナビゲートとして尽力しますとも。

青山テルマみたくシャレオツな表情を見せたかと思えば、菩薩峠に達するかのように響き渡る深遠な歌声。
変化自在な歌唱に合わせて、リスナーである我々もスキップしたり、スピーカーを前に畏まってみたりと大忙し。
そんな梁静茹さんですが、噂によるとアジアン・マスターのころんさんとは既に親密な間柄にあるようです。
降り注ぐ嫉妬の雨に、身も心もグッショリ。そんな今宵の繁盛亭。まだ寝ません。

梁静茹 / 静茹&情歌

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プロフィール

繁盛亭アルバイテン

Author:繁盛亭アルバイテン
ヒッピー・ボヘミアンな生活に憧憬を抱く浪速のポンコツ。
物心ついたときから寝つきが悪い。

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